映画っていいねえ。本っていいねえ。

映画や本の感想など。ネタバレ全開なので、ご注意ください。

読書

ヴァン・デル・ポスト『新月の夜(The Night Of The New Moon)』を読む【3】

※注意!The Night Of The New Moon『新月の夜』『影の獄にて』『戦場のメリークリスマス』のネタバレがあります。 ※前回の記事はこちら nhhntrdr.hatenablog.com The Night Of The New Moon『新月の夜』感想③ 恐らく主要人物の一人だと思われるNicholsという…

ヴァン・デル・ポスト『新月の夜(The Night Of The New Moon)』を読む【2】

※注意!The Night Of The New Moon『新月の夜』『影の獄にて』『戦場のメリークリスマス』のネタバレがあります。 ※前回の記事はこちら nhhntrdr.hatenablog.com The Night Of The New Moon『新月の夜』感想② 引き続き、捕虜収容所内での様子が続く。前回取…

ヴァン・デル・ポスト『新月の夜(The Night Of The New Moon)』を読む【1】

※注意!The Night Of The New Moon『新月の夜』『影の獄にて』『戦場のメリークリスマス』『絞死刑』のネタバレがあります。 過去に『戦場のメリークリスマス』や原作『影の獄にて』についての記事を書いてきたのだが、特に最初の記事を書くにあたっては河合…

『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』におけるほっこり系の友情について

今月は『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』(以下『絶対BL』)の単行本4巻とドラマCD4巻の発売が重なり、ファンとしては非常に有り難い月だった。くらげバンチでの連載は最近だと2週間に一度かそれ以上に期間を置いていたりするので、久しぶりの燃…

よしながふみ『愛すべき娘たち』感想(ネタバレあり)

※注意!『愛すべき娘たち』のネタバレがあります。 『きのう何食べた?』『大奥』のよしながふみによる連作短篇集。全5話で構成されており、すべてのエピソードにて多少いびつな生き方をしている女性が――さらに言うと、何らかの形で背後に親の気配が感じられ…

江平洋巳『恋ひうた~和泉式部異聞~』感想。女の業を背負って生きる和泉式部の姿が切なくも清々しい作品

※注意!『恋ひうた~和泉式部異聞~』のネタバレがあります。 高校生の頃、どうしようもなく古文が苦手で、苦手意識を払拭できないまま大学入試に挑んだ結果、センター試験の国語でひっどい点数(自己採点しながら血の気が下がっていく思いがした)を取った…

木原音瀬『美しいこと』ネタバレ感想

※注意!『美しいこと』のネタバレがあります。 初めて木原音瀬(このはらなりせ)さんの本を読んだのは、もう十年前以上になるだろうか。本屋で『牛泥棒』というBL小説を見つけたのだ。今は手放してしまったから詳しい内容は覚えていないけれど、明治か大正…

『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』実写版とドラマCDにも手を出してみた

『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』にハマったという記事を先日アップしたのだが、あれから関連メディアにもうっかり手を出してしまった。えへへ。 nhhntrdr.hatenablog.com 今回は実写ドラマ版とCDドラマの感想の記事なのだが、予めお断りしてお…

『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』は良いぞ!

くらげバンチ連載中の『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』(以下『絶対BL』)が面白い。 絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男 - 紺吉 / 第1ラウンド 絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男 | くらげバンチ (function(b,c,f,g,a,d,e){b.M…

早見和真『イノセント・デイズ』感想(ネタバレなし&ネタバレあり)

たまたま本屋で見かけ、帯に書かれた文言に惹かれて『イノセント・デイズ』を購入したのが昨年の年末。帰宅後、物語の世界に一気に引き込まれて、読み終わった後もなかなか戻って来られなかった。主人公・田中幸乃のことが頭から離れない。結局私は田中幸乃…

キム・ハドソン『新しい主人公の作り方』――女性的ストーリーを生きる「ヴァージン」という主人公像

物語は大きく「男性的なストーリー」と「女性的なストーリー」の2種類に分かれるらしい。これは主人公が男性か女性かという違いではない。男性的なストーリーというのは「ヒーローの旅」であり、女性的なストーリーとは「ヴァージンの自己実現」であるとキ…

トラウマ絵本『おっとあぶない』についての記憶

幼少の頃に読んだ本に今でも影響されている、なんてケースは少なくないと思う。 私の場合、小さい頃に図書館で見つけた『サンドリヨン』と『シンデレラ』と題された絵本に衝撃を受けた記憶がある。この頃の私にとって、シンデレラと言えばディズニーアニメの…

最近読んでいる本についての雑感

またしても更新をサボっておりました。現在、バタバタしておりまして、腰の重い私にしては珍しく、新幹線の距離を行ったり来たりしております。基本的にスーパーインドア体質で外出嫌い。ひどいときは関東から出ないまま一年を過ごした年もあるくらいな人間…

『明日、私は誰かのカノジョ』1~10巻 ネタバレなし感想

よくバナー広告で見かける漫画『明日、私は誰かのカノジョ』(以下『明日カノ』)。読んでみたら、物凄く面白い!一気に最新刊まで読んでしまった。 レンタル彼女、パパ活、ホス狂、配信者の炎上といった、現代ならではのモチーフが散りばめられていて、もは…

『大島渚全映画秘蔵資料集成』を買った

欲しい欲しいと思っていた『大島渚全映画秘蔵資料集成』を購入した。新文芸坐の『戦場のメリークリスマス』上映会で著者・樋口尚文さんのサイン会が開かれると聞いて、買うなら今だと決断した次第。 6/17(金)は、新文芸坐にて『戦場のメリークリスマス 4K修…

金蓮花『銀葉亭茶話』シリーズの思い出を語ってみる

※注意!『銀葉亭茶話』シリーズ各巻のネタバレがあります。 中学生の頃にハマり、今でもたまに読んでしまう作品がある。コバルト文庫から刊行されていた『銀葉亭茶話』シリーズだ。 小学校高学年の頃はもっぱらコバルト文庫ピンキーの作品を購入していたので…

ヴァン・デル・ポスト『影の獄にて』を読みながら『戦場のメリークリスマス』をもう一度考えてみる

※注意!『戦場のメリークリスマス』、ヴァン・デル・ポスト『影の獄にて』のネタバレがあります。 先日『戦場のメリークリスマス』の感想を書いたのだが、その際に繰り返し本編を見たことで、うっかり『戦メリ』熱が再燃してしまった。 数年前に初めて観たと…

アーシュラ・K・ル・グウィン『オメラスから歩み去る人々』を読みながら、罪悪感について考えてみる

※注意!アーシュラ・K・ル・グウィン『オメラスから歩み去る人々』のネタバレがあります。 『オメラスから歩み去る人々』を知ったのは、BTSの「Spring Day」のMVを見たのが(そして、MVの考察サイトを閲覧しまくったのが)きっかけだった。 www.youtube.com …

桐野夏生『夜の谷を行く』についての雑感

※注意!桐野夏生『夜の谷を行く』のネタバレがあります。 以前にお伝えしていたプライベートでのバタバタがひと段落して、ようやく自宅に戻ってきた。一ヶ月ほど家を離れて故郷にいたことになる。今は久しぶりの我が家でダラダラしているところだ。「とにか…

『孫子』を読むなら、元阪神監督・岡田彰布氏のコメントを解読するデイリースポーツ記者の気持ちになってみようという提案

私事だが、今年の7/10に開催された三国志学会主催の「第7回“三国志”の作り方講座」に参加した。 sangokushi.gakkaisv.org このときのテーマが三国志研究の第一人者・渡邉義浩先生による「後漢末から三国時代における教育」で、三国時代を生きた人々がどの機…

『ヒカルの碁』ネタバレ感想――少年は成長し、やがて親殺しを果たす

※注意!ほったゆみ、小畑健『ヒカルの碁』のネタバレがあります。 今年で『ヒカルの碁』20周年だそうで、うわぁ、もうそんなに経つのか、早いなぁ、私も年を取るわけだ、と思った次第である。 かつて囲碁ブームを巻き起こしたこの作品。これをきっかけに囲碁…

「主人公が成長しない作品――窓辺系」に対する雑感。三宅隆太『スクリプトドクターの脚本教室・初級篇』を読みつつ。

※注意!映画版『ディア・エヴァン・ハンセン』のネタバレがあります。 映画や小説をはじめとするストーリーもののレビューに対して、ちょくちょく「主人公の成長が見られない」という指摘を見かける。かく言う私も主人公の成長が感じられないと、割とモヤモ…

本や映画を紹介しつつ、私の三国志遍歴を辿ってみる

突然だが、三国志が好きだ。ガチ勢と名乗るのは憚られるが、赤壁や官渡に行ったことがあるレベルにはファンである。 ファーストコンタクト そもそもの出会いは高校生のとき。その頃の私は『彼氏彼女の事情』を読んでいた。手元にないので確かなことが言えな…

村田沙耶香『コンビニ人間』ネタバレ感想――そうだ!私は人間ではなかったのだ!

※注意!村田沙耶香著『コンビニ人間』のネタバレがあります。 「あー、コンビニ好きな人の話なのね」と思っていたら、そうではない。コンビニを命がけで愛している人の話だった。 「正常であれ」と強いられ 古倉さんが言及する「コンビニ店員」とは さいごに…

思春期を描いた名作を読みつつ、あの頃のギラギラした苛立ちについて考えてみる――原田宗典『十七歳だった!』、綿矢りさ『インストール』『蹴りたい背中』

今回はネタバレをしない予定なので、いつもの注意書きはナシの方向で。思春期についての話である。 原田宗典さんにハマっていたあの頃 10代の鬼才が書いた名作『インストール』『蹴りたい背中』 お馬鹿で愛おしい思春期 原田宗典さんにハマっていたあの頃 久…

あの凶悪犯と私たちは全く違う人間だと断言できるだろうか?――加賀乙彦『悪魔のささやき』

※注意!映画『教誨師』のネタバレがあります。 はじめに 普通の人が凶悪犯に変わる さいごに はじめに 映画『教誨師』を観たとき、終盤のシーンでゾッとした。女性死刑囚が花粉症のつらさについて愚痴るシーンだ。教誨師である主人公が花粉症ではないことを…

『鬼滅の刃』の考察記事にアドレナリンが出た!

※注意!『鬼滅の刃』についてのネタバレあり。 realsound.jp とても面白い記事だった! 「うわ〜、こういう考え方が好きだわ〜」と思いながら、楽しんで読ませていただきました、感謝感謝。