映画っていいねえ。本っていいねえ。

映画や本の感想など。ネタバレ全開なので、ご注意ください。

『シャーロットのおくりもの(2006)』ネタバレ感想――春生まれのブタは冬が来るとハムになる!?

※注意!『シャーロットのおくりもの』についてのネタバレがあります。

 

 

か~わいい~~!

主人公の子ブタ・ウィルバーがめちゃくちゃかわいい映画である。

子ブタってだけでもかわいいのに、無邪気で人懐っこい。ぴょこぴょこ動き回る。

日頃、動物映像を見てはニヤニヤしている人間なので、至福の映画体験だった。

※私のニヤニヤ動画

youtu.be

 

 

今作品は同名のベストセラー絵本を原作としている。

あらすじは以下の通り。

農場の娘ファーンに育てられた子ブタのウィルバーは、自分がいずれクリスマス用のハムとして食卓に乗る運命にあることを知る。脅えるウィルバーを、納屋に住むクモのシャーロットが励ますが……。

 

シャーロットのおくりもの : 作品情報 - 映画.com

 

 

 

 

死の影につきまとわれる子ブタ「ウィルバー」

ウィルバーと蜘蛛のシャーロットの奇妙な友情を軸に物語は進む。

農場を舞台にした話で、文字通り牧歌的なシーンの連続だが、ウィルバーには常に死の影がつきまとっている。

 

春に産まれた直後、ウィルバーは間引かれそうになった。一緒に生まれた兄弟の中、彼は育たないと判断されたからだ。心優しい少女ファーンが飼育を買って出るが、彼女の家で育てるには限界があり、農場を営む伯父の家に売られる。

 

新たな住処は伯父の家の納屋だ。ウィルバーはそこで、住民のひとりであるネズミのテンプルトンから「ブタはクリスマスになると、ベーコンやソーセージにされて食べられる」と告げられる。

恐怖に襲われるウィルバーに対し、「必ず守る」と約束するのがシャーロットである。

 

生まれたばかりのころに母から引き離されたウィルバーにとって、シャーロットは母的な存在だ。納屋で浮いた存在だったウィルバーを、最初にきちんと相手をしてくれたのはシャーロットだった。

 

シャーロット本人もはみ出し者である。納屋の住民たちからは嫌われて、気持ち悪がられる。ウィルバーだけが彼女を「きれい」だと評する。

 

 

優しい蜘蛛「シャーロット」

テンプルトンから話を聞かされて以降、ウィルバーの中でひとつの言葉がのしかかる。「春生まれのブタは雪を見られない」

ウィルバーの中に「雪を見たい」という切実な願いが生まれる。シャーロットはそんな彼に「絶対に守る」と約束をする。

 

彼女はウィルバーを守るために何をしたのか?

蜘蛛の巣に人間の言葉を編み込むことだ。ある朝、蜘蛛の巣の編み目に「特別なブタ(SOME PIG)」という言葉が浮かび上がっているのを農場の青年が発見する。たちまち、人々の間でウィルバーが話題になる。奇跡のブタ・ウィルバーを見るために農場に群衆が詰めかけるようになった。しかし、しばらく時間が過ぎると、人々はウィルバーのことを忘れ去ってしまう。

 

シャーロットは諦めない。テンプルトンの協力も得ながら、文字の入った蜘蛛の巣を張り続け、ついには人々の心を動かすことになる。

奇跡を見せたブタだとしてウィルバーは品評会で優勝し、食肉となる結末を免れた。

 

優勝後のスピーチで、伯父は「我々は奇跡を目に見えないものだと思っているが、気づかないだけで毎日起こっている」と述べる。

日々の生活を送る中で私たちの見える世界は限られている。気づいていないだけで我々のそばでも、意外な存在が意外な形で友情を育んでいるのかもしれない。

 

 

繰り返される「死と再生」の物語

ウィルバーの命が助かるのを見届けるように、シャーロットは息を引き取る。彼女が死ぬ直前に産み落とした卵の袋を、ウィルバーは納屋の仲間と共に守り育てる。

やがて冬が来ると、ウィルバーはずっと見たかった雪を目にする。これこそが「シャーロットのおくりもの」だ。

さらに時間が流れ、春がやって来る。もうひとつの「シャーロットのおくりもの」が現れる。ようやくシャーロットの子供たちが生まれたのだ。子供たちは風に乗って旅に出る。そして、三匹の蜘蛛はシャーロットのように納屋に残り、ウィルバーたちとの生活を始める。

 

ラストに「シャーロットは死んでなんかいない」というナレーションが流れる。シャーロットの命そのものは終わったが、彼女の心は受け継がれていくことを予感させてくれる、良い終わり方だった。

 

 

精神分析家・河合隼雄氏は『こころの読書教室』において、原作絵本へ言及している部分でこう述べている。

わかりますね、死と再生がずっとテーマになっていることが。(中略)死の後にたくさんの生がある。

 

河合隼雄著『こころの読書教室』、新潮社

 

シャーロットによって助かったウィルバーの命、生み出された多くの次世代の命。生が終わっても、また次の命へと受け継がれる。

 

また、シャーロットの死の前後でウィルバーの自立が描かれるのも興味深い。守られるだけだったウィルバーはシャーロットの死を経て、彼女の卵の庇護者となる。ウィルバーを愛していた娘・ファーンも並行するように、夢見がちな少女から大人の女性への一歩を歩み出す。

子ども時代の終わりを優しく描いた物語でもあるように思えた。

 

 

科学が発達した今、「死はすべての終わり」としか思えなくなることがある。死んでも残るものがあると知らせてくれる作品は、現代社会を生きる私たちの処方箋ではないだろうか。

 

そういうテーマを抜きにしても、ウィルバーたち農場の動物が本当にキュートだから、かわいいもの好きの人にも全力でオススメしたい。

あー、マザー牧場行きたい…。