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『あした世界が終わるとしても』ネタバレ感想――神よ、作者の意図を読み取れない愚かな私をお許しください

※注意!『あした世界が終わるとしても』についてのネタバレがあります。

 

突然だが私は、名レビュワーの残念映画評が好きだ。そして、うっかり興味を持ってしまい、実際に観賞しては絶望するタイプの面倒くさい人間である。


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そういうわけで、こちらの動画のレビューを観て今作に興味を持った次第である。

幸か不幸かdアニメストアで見放題だったので、すぐに観ることができた。

えーっと、ああ、うん……

 

 

 

 

あらすじは以下の通り。

幼いころに母を亡くして以来、心を閉ざしがちな真。彼をずっと見守ってきた、幼なじみの琴莉。高校三年の今、ようやく一歩を踏み出そうとしたふたりの前に突然、もうひとつの日本から、もうひとりの「僕」が現れる――。

 

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私は教科書が読めない

我々が暮らしている世界には並行世界があり、そこで生きるもうひとりの自分がいる。独立していた世界が徐々に混じり合い、こちらの世界に危機が迫る――
割りとワクワクするシチュエーションだと思う。


いきなり自分語りを始めて恐縮だが、私は学生時代、現国が苦手だった。文系のくせにセンター試験で最低点数を叩き出したのが国語。もちろん、足を引っ張ったのが現国だ。
ほら、あるじゃないですか。「この作品で作者が言いたいことを選択肢から選べ」ってやつ。あれが苦手なんですよ。

新井紀子著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』で、全国の学生に行った読解力テストの結果が記載されている。

 

この中で「「中学生の半数は、中学校の教科者が読めていない状況」と判断するに至った」と述べられている部分がある。
その理由について複数言及されているが、その中のひとつが「単語しか見ていない」というものだ。
例としてあげられているSiriについての話が面白い。Siriに「近くにあるおいしいイタリア料理店」を尋ねたときと「近くにあるまずいイタリア料理店」を訊いたとき、どちらも検索結果として同じ店がリストアップされるのだという。「まずいイタリア料理店」で検索する人が少ないため、「まずい」という部分の重要度が小さくなってしまったためなのだそうだ。

同じように中学生の半数も、独立した単語そのものしか見ておらず、そこに付随する「以外の」といった語句を読み飛ばしたり理解せずにいると、新井氏は推測している。

かく言う私も同じで、単語しか見ないタイプである。現国の選択肢を選ぶポイントは、本文中の単語がより多く出ているかどうかだ。


長々と関係のない話をしていたのは、これがいいわけであり、この記事の前提だからである。

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私は昔から作者の意図を読み取るのが下手だ。
そういうわけで、『あした世界が終わるとしても』で作者が言いたいことがわからなかった。この映画、何が言いたかったんだろう?
監督さん、脚本家さん、ごめんなさい。私はダメ人間です……。

 

 

 

よし、テーマを探してみよう!

と言ってしまうと話が終わってしまうので、もう少し考えてみたい。この物語は何を伝えたかったのだろうか?

『Dear Evan Hansen』の記事で述べたが、ラストで主人公はテーマを体現した人物になっているという目線で物語を見ている。

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今作の結末で、真は琴莉に告白をしている。それと対になるように、序盤で告白しようとするができずにいるシーンがある。
ということは、この作品のテーマは「臆病な自分を克服し、好きな子に想いを伝えられる強い自分になる」だな!
……いや、しっくり来ない。

真が告白できなかったのは、邪魔が入ったからで、臆病だったからではない。邪魔さえ入らなければ、告白はできていた。
そもそも、相手の琴莉は真の気持ちを知っている感じだし、真も自分の気持ちが知られていることに気づいているようである。じゃあ、ほとんど問題ないよね!


これはどうだ?
こちらの世界と並行世界の人間の命はつながっており、片方の人間が死ぬと、もう片方の人間も死んでしまう。
琴莉の向こうの世界での姿はコトコであり、「日本公国」を支配している公女だ。公女の圧政から日本を解放するため、向こう側の世界の真――ジンは琴莉を殺害するため、こちらの世界へやって来る。

お、これはいいじゃないですか!好きな子を守るために、もうひとりの自分と対決する。アニマを巡る影との戦いだ。
しかし、である。この問題は早々に解決する。ジンが真を攻撃して殺すようなことがあれば、ジン本人も死んでしまう。そういうわけで一時休戦となってしまうのだ。
さらに、物語が進むうちに日本公国には影の支配者「公卿」が存在しており、彼らが本当の敵だと明かされる。真とジンの対決らしい対決は、本編中に一切ない。


なら、公卿との対決である。公卿は真のネガティブな部分を象徴した存在で、彼らとの戦いを経て、真は成長するのだ!
……ごめんなさい、公卿にただの敵役以上の意味が見いだせませんでした。

ついでだけど、ラストのバトルで四人一斉に脳細胞を破壊されたシーンは笑ってしまいました。倒すの雑すぎませんかね……。


いやいや、途中でコトコが公卿によって処刑され、琴莉も死んでしまうぞ!琴莉を死から救う、アニマの救済だ!
……何かよくわからないうちに琴莉、生き返ってたね。

 

 

……我、敗北せり

そういうわけで、この作品のメッセージが読み取れませんでした。討ち死にである。
確かに「真はこちらの世界を滅ぼそうとする公卿の野望を阻止した」というストーリーはあるが、それはあくまで外的なストーリーだ。良い物語には、内的なストーリーも付随されている。
例えば『スターウォーズ』。
外的なストーリーは「銀河帝国の野望をルークが打ち破る」といったものだが、その裏で「ルークはフォースの暗黒面に囚われてしまうかどうか」といった内面的ストーリーも繰り広げられる。外的と内的、ふたつのストーリーが有機的に絡み合うことで、あの名作映画は生まれた。

もちろん、外的なストーリーありきの作品もある。『燃えよドラゴン』に私たち、そんなに思想性は求めたりしない。ただただブルース・リーのかっこいいアクションが見たいのだ。
だが『あした世界が終わるとしても』はそういった作品のようには思えない。

 

 

 

映像体験としてはオススメ!

演出面やストーリーそのものに対してもつっこみはあるが、それは冒頭に紹介した動画で言及されているので、ここでは割愛する。

映像はとてもクオリティが高かっただけに、勿体ないなぁと思う。セルルックCGの技術はここまで到達していたのか、と驚かされることが多々あった。古い人間なので、CG人間との初めての出会いは初代バーチャファイターである。

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動きの不自然さについて、特に気にならなかった。私のように目の肥えていない人なら、楽しめる映像だと思う。
個人的な話だが、『エクスアーム』を観ていた直後だったので、本当にクオリティが高いとしか思えなかった。

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とにかく映像自体は美しいので、次はストーリーと演出、台詞回しをもっとブラッシュアップさせた作品を期待したい次第である。

 

 

 

 


本当に冒頭の動画の方のレビューは上手い。うっかりこの作品だけでなく、似たような作品として挙げられていた『二ノ国』も観ちゃったぞ。あの、その、えーっと、そのうち記事にするかも……

 

 

 

二ノ国

二ノ国

  • 山﨑賢人
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