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『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』ネタバレ感想――世界は残酷で、私たちの願いなんて聞いてくれやしない。でも、希望はきっとある。

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※注意!『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』『「鬼滅の刃」無限列車編』のネタバレがあります。

 

『TVアニメ「鬼滅の刃」無限列車編』が最終回を迎えたこともあり、LiSAの「炎」をリピートしていた。

 

 

 

 

「願い」は無力だ

改めて聴くと、歌詞の中に炭治郎の無力感が繰り返し現れているように思えた。『無限列車編』は長い物語の一部分だから、あまり単体で考えにくい。少なくとも私は『無限列車編』のテーマはこれだ、というものを見いだそうと思っていない。

ただ、最後に残る炭治郎の絶望と無力感。これはテーマそのものではないのかもしれないが、なぜか頭から離れない。


昔、個人的に好んでいたのは「強く願えば、思いは叶う」みたいな作品だった。絶望的なシチュエーションの中、主人公は「俺は(私は)諦めない!」と言った瞬間に、ぱああっと光って奇跡が起こるようなやつだ。

 

しかし、現実はそんなに甘くない。東日本大震災やコロナ禍といった出来事によって我々は「強く願う」ことの無力さを知った。

 

以前に読んだこちらのブログが面白かった。

※こちらの記事では映画『HELLO WORLD』のネタバレがあります。

blog.monogatarukame.net

 

セカイ系のような日本のアニメに対し、海外のアニメ映画は「戦争などの外的要因によって翻弄される主人公」を描く物が多いのだそうだ。戦争や貧困は、まさに「強く願う」だけでどうにかなってくれるものではない。

 

年齢を重ねると、海外のアニメ映画のようなタイプの物語が心に残るようになった。『無限列車編』と「炎」の歌詞は、そんな私にグサッと刺さってきたのだ。

 

 

油断できない「逆詐欺映画」

さて、前置きが長くなってしまった。今回は『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』についての話である。

 

公開時に「かわいいと思ったら号泣させられる、逆詐欺映画」といった評価を受けていたので、ただのほんわか映画でないのだと覚悟してはいた。実際に観賞して感じたのが、『無限列車編』や海外のアニメ映画のような「世界に翻弄される」タイプのストーリーだということだ。

 

あらすじは以下の通り。

ある日すみっコたちは、お気に入りのおみせ「喫茶すみっコ」の地下室で、
古くなった一冊のとびだす絵本をみつける。 絵本を眺めていると、突然しかけが動き出し、絵本に吸い込まれてしまうすみっコたち。 絵本の世界で出会ったのは、どこからきたのか、自分がだれなのかもわからない、
ひとりぼっちのひよこ・・・?
「このコのおうちをさがそう!」新しいなかまのために、すみっコたちはひとはだ脱ぐことに。 絵本の世界をめぐる旅の、はじまりはじまり。

 

引用元:ストーリー | 映画 すみっコぐらし

youtu.be

 

すみっコたちはひょんなことから絵本の世界に吸い込まれてしまう。そこで出会ったのが「ひよこ?」だ。「?」がついているのは公式設定で、この子は自分がひよこかどうか分かっていないのである。

 

物語はまいごのひよこ?のために、この子のおうちやなかまを探すというものだ。「マッチ売りの少女」や「アラビアンナイト」などの童話世界を冒険しながら、すみっコたちは面白おかしく、そしてめちゃくちゃかわいらしく奮闘する。

 

 

残酷な世界とすみっコたち

終盤、ひよこ?の正体が明かされる。ひよこ?はすみっコたちとは違う存在だった。違う存在だから、すみっコたちと同じ世界で共存することができない。冒険の中で、すみっコたちとひよこ?は固い絆を結んでいた。ずっといっしょにいたい。離れたくない。なのに、世界は許してくれない。

 

クライマックスでひよこ?の涙により奇跡が起きるが、「すみっコたちとひよこ?の共存」という最大の願いは叶えてくれない。ほんわかとして、めちゃくちゃキュートな世界観なのに、この映画は「逆セカイ系」だ。登場人物は世界の理に翻弄され、ねじ伏せられる。

 

おどろおどろしく書いてしまったが、私はこの映画が大好きだ。世界はどうしようもなく残酷だが、絶望に対する救いが、ほかでもないすみっコたちの手によってもたらされるからだ。

ラストシーンからエンドロールにかけて、私は号泣してしまった。これはどうにもならない現代社会に生きる私たちのための処方箋だ。

 

 

さいごに

私たちの願いを聞いてくれない無情な世界の中で、それでもできることがある。当初望んでいた100%の結果ではないが、どうにもならない状況でなしうる解決策はある。それを教えてくれているような気がする。


『無限列車編』で挫折し、無力感を味わった炭治郎も歩みを止めることはない。彼にできることは、少しずつ着実に己を鍛え、強くなることだけだ。

 

結局、どうにもならない状況で私たちができることは、散々言われているが「自分にできることを積み重ねていく」ことに尽きるのだなぁと思う。中には戦争や難病のように、「できることすら奪われる」という状況もあるから、すべての事例に当てはまるわけではないが……。

 

ただ、私は「100か0か」で考えがちな人間なので、「100が実現できなくても絶望しなくていいよ。60や40を目指してみない?0よりずっと素敵だよ」と今作で思えるようになったのは大きい。恩人のような映画だ。

 


さて、そういうことは抜きにしても、すみっコたちをひたすら愛でるという目的で観ても、120%楽しめるので、かわいいもの好きの方には強くオススメしたい!

 

特にひよこ?のかわいさは筆舌に尽くしがたく、あのまんまるでちょこんとした姿が私の好みにクリティカルヒット!ああ、なんてかわいいんだ。映画だけの限定キャラなんて勿体ない……。これからも私はひよこ?を強く推していきたい。

 


最新作もかわいくて終始ニヤニヤしながら観てしまった。やっぱりかわいいものっていいなぁ、素敵だなぁ。