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『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』ネタバレ感想――タイムトラベルができたからこそ彼は時間の大切さを知った

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※注意!『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』のネタバレがあります。

 

 

涙活という言葉が流行ったことがあったなぁとふと思い出す。

今でも私は映画で涙活してはスッキリすることが多い。もともと感動しやすい人間なので、ちょっとしたことですぐ涙ドバーである。

 

そんな私にとって、もはや泣きすぎて死の危険すら感じてしまう作品がある。

 

 

ひとつは『モアナと伝説の海』。「I am Moana」という歌が流れるシーンがあるのだが、私はいつもここで呼吸困難になるレベルで泣いてしまう。

出先で『モアナ』のサントラは絶対に聴かない。TPOわきまえずに涙ドバー状態になるからだ。

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もうひとつは今回取り上げる『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』。

私にとってラスト近くのシーンの破壊力はあまりに凄まじく、呼吸困難の上、頭痛がするまで泣かされる。もちろん、このシーンのBGM「「アバウト・タイム」テーマ」を出先で聴くことはない。人前で不審死なんて嫌すぎる。

「アバウト・タイム」テーマ

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というわけで、この記事はどうして私がそんなにも『アバウト・タイム』に泣かされてしまうのかをつらつらとつづってみたものだ。

 

不遇な映画『アバウト・タイム』

あらすじは以下の通り。

イギリス南西部コーンウォールに住む青年ティムは、両親と妹、そして伯父の5人家族。
どんな天気でも、海辺でピクニックを、週末は野外映画上映を楽しむ。風変りだけど仲良し家族。しかし、自分に自信のないティムは年頃になっても彼女ができずにいた。
そして迎えた21歳の誕生日、一家に生まれた男たちにはタイムトラベル能力があることを父から知らされる。そんな能力に驚きつつも恋人ゲットのためにタイムトラベルを繰り返すようになるティム。

弁護士を目指してロンドンへ移り住んでからは、チャーミングな女の子メアリーと出会い、恋に落ちる。
ところが、タイムトラベルが引き起こす不運によって、二人の出会いはなかったことに!

なんとか彼女の愛を勝ち取り、その後もタイムトラベルを続けて人とは違う人生を送るティムだったが、やがて重大なことに気がついていく。どんな家族にも起こる不幸や波風は、あらゆる能力を使っても回避することは不可能なのだと。そして、迫られる人生最大の選択——。

 

 

引用元:映画『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』オフィシャルサイト|大ヒット上映中!


www.youtube.com

 

個人的に『アバウト・タイム』は不遇な映画だと思う。この映画の感想を少し検索してみると、「主人公はタイムトラベル能力を使って、人生を自分の都合の良いものに変えている。狡い奴だ」といったような内容のものがちょこちょこ見つかる。

 

 

確かに主人公ティムのことは羨ましい

確かに主人公ティムは、作中でトラブルが起こるたびに過去に行き、タイムトラベル能力があるからこその手法で問題を解決する。こんな能力があれば、と私も羨ましく思う。何せ、誰かとの会話でうっかり機嫌を損ねることがあっても、この能力があれば、会話の内容をやり直すことが可能。「あのとき、あんな言葉を言わなければ……」なんて後悔など、ティムには無縁だ。

 

とにかくティムのタイムトラベルは、自分の身の回りのトラブル解決に終始しており、『バタフライ・エフェクト』のように誰かの命を救いたいとか、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように改変された世界を元に戻したいとか、そういった壮大さがない。身近なタイムトラベルであり、だからこそ「ティムはタイムトラベルで得をしている。狡い」と思われがちなのだと思う。

例えば、初めてできた彼女メアリーとの初めての夜。彼女に手ほどきを受けながら、ティムは恐る恐る事を運ぶ。そして彼は能力を使い、ベッドイン前の時間に移動するのだ!コツを掴んだティムは、また彼女と(自主規制)。結局、初めての夜を三回繰り返し、彼女に「あなたすごいわね(うっとり)」と言われてしまう。すごいぞ、ティム。何てみみっちいんだ。

 

さらに、ティムは作中で父を病気で失う。それでも過去に戻れば、今まで通り生きた父に会えるのだ。この描写を見て、ティムの能力がほしくてたまらなくなる人は多いと思う。大切な人の死という不可逆なことですら、ティムは簡単に乗り越えられる。

 

 

実は万能ではないタイムトラベル能力

タイムトラベル能力により彼女をゲットし、死んだ父に気軽に会いに行く。良いことずくめに見えるが、実はティムの能力は万能ではない。

ティムはメアリーと結婚し、子どもをもうける。その状態で妹に起こったトラブルを解決するために、子どもが生まれる前の時代に移動し、過去を変えた。それにより、妹の問題は解決したものの、子どもが違う子に変わってしまったのだ。「あるタイミングの精子で子どもは作られるから、少しでもズレると違う子になる」と父はティムに告げる。ティムは泣く泣く過去に移動し、妹のトラブルを解決しない状態に戻すのだった。

 

亡くなった父との時間も無限ではなかった。メアリーが父の死後、新たな子どもを作ろうと提案する。子どもが生まれることは、父との永遠の別れにつながることだ。それでもティムは、最終的に新たな子どもを作ることに賛成をするのだった。

 

 

タイムトラベル能力があったからこそ、ティムは気づいた

冒頭で私が言及したシーンとは、ティムと父が最後の時間を過ごすシーンだ。子どもが生まれる直前、ティムは父のもとへ行き、もう訪ねることはできないと告げる。そこで父は昔に戻ろうと提案する。ティムの幼い頃、浜辺でいっしょに遊んだ日。過去を変えてしまわないように、二人はかつて過ごした時間を、全く同じ形で過ごす。そして、ティムは父との別れを経て、タイムトラベル能力の使用をやめるのだ。

 

ティムは生前の父から、幸せになる秘訣を教わっていた。まずは普通の人と同じように、一日を過ごすこと。二つ目は、毎日の終わりにもう一度時間を移動し、二度目の一日を過ごすこと。ティムはこの教えにより、最悪だと思っていた日でも、視点を変えれば愛しさに満ちていたことを知る。1回目ではレジの女性を見る余裕もなかったが、2回目では女性の笑顔に気づく。弁護士としての仕事に必死だった1回目に対し、2回目は緊張が解け、周りを見渡すことができるようになる。

父の教えに従って能力を使い、時間の大切さを知ったティムは、最終的にはタイムトラベル能力を使わずして日々を愛おしく感じることができるようになったのだ。

 

タイムトラベルができたからこそ、ティムは一度きりで戻っては来ない時間の大切さを知った。だからこそ、ティムの最後のタイムトラベルの目的は、過去の出来事を変えることなく、その当時と同じように過ごすことだったのだ。幼い頃に父と浜辺で遊んだ日。そのときのティムは、これが特別な時間になるとは思ってもみなかっただろう。延々と続く毎日の一部に過ぎなかったはずだ。父との別れが迫ったときに初めて、その時間がどれほど得がたいものだったのかを知る。

 

そのことを無邪気に遊ぶ二人の姿で描いているから、私はこのシーンで涙が止まらなくなるのだと思う。「時間は大切だ。一度きりで、二度と戻ってこない。無駄にするんじゃない」というメッセージをこねくり回して百万言叫ばれるよりも、たった数十秒のティムと父のシーンで私は時間の大切さを教えられた。

 

 

最後に

このブログでたびたび取り上げている『ディア・エヴァン・ハンセン』について、どうしてもエヴァンの嘘をつくという行為に注目が集まり、批判されがちなのが勿体ないと常々思っている。

nhhntrdr.hatenablog.com

 

同じく『アバウト・タイム』もティムのタイムトラベル能力そのものに注目が集まりがちで、批判されがちなのが勿体ない。ラストのナレーションは、タイムトラベルできるティムだからこそ行き着いた結末であることを、もっともっと広めていきたいと思う次第である。

 

 

 

そういうわけで当ブログは、『アバウト・タイム』に加え、『ディア・エヴァン・ハンセン』も応援しています!

nhhntrdr.hatenablog.com

 

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