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『ザ・フード -アメリカ巨大食品メーカー』――食という視点からアメリカの歴史を見つめた快作ドキュメンタリー!

突然で恐縮だが、アマプラで配信されている『ザ・フード -アメリカ巨大食品メーカー』というドキュメンタリーが面白い。アメリカ発の食品メーカーが、いかにして誕生し、どのように拡大したのかを紹介している作品である。

 

 

アメリカ通史とともに語られる食品メーカーの歴史

取り上げられているメーカーは私たちが現在でもお世話になっているものばかり。

 

本編を見る前、てっきり「ケロッグ編」「マクドナルド編」のように企業ごとに分かれているのかと勘違いしていた。だが、実際は紀伝体スタイルではなく、編年体のスタイルだった。アメリカの歴史という大きな軸があり、その中で各企業の動きが紹介されるのだ。

正直なところ、最初は戸惑った。ハインツの話をやっていたかと思うと、次はコカ・コーラの話。かと思えば、またハインツの話に戻る、みたいな感じだ。

もっと、ひとつの企業をじっくり見たいのに。そんな感じで不満を覚えていた。

 

 

編年体スタイル採用には理由がある!

だが、すぐに不満も消えた。編年体スタイルにはきちんと理由があったのだ。

なぜ彼はその商品を開発しようと思ったのか。その理由として、歴史的な要因は切っても切り離せない。例えば、ハインツの創業者ヘンリー・ハインツがトマトケチャップを、ジョン・ペンバートンコカ・コーラを開発しようとしたのも、その頃のアメリカの事情が関わっている。

 

産業革命の結果、アメリカで都市化が進んだ。まだ冷蔵庫もない時代だから、都市部での食品衛生事情は良くなかったらしい。何週間も経った生鮮食品が普通に販売されていたという、現代日本人からすると信じがたい状況だった。衛生面での問題は勿論、味やにおいの面でもひどいものだったようで、それをごまかすためにケチャップを使っていた。だが、ケチャップそのものの品質もまた、劣悪なものだったという(ちなみにこの頃のケチャップというと魚醤のようなものだったらしい)。

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ザ・フード』では、ハインツは「安心して食べられる物を」という目的のもと、トマトケチャップを開発する過程が描かれている。食品衛生に問題の有る時代にハインツは商品の開発を決意し、産業革命の隆盛に乗じてケチャップの大量生産にも乗り出した。工場に電気を導入したのも、流れ作業を取り入れたのも、当時としては革新的なことだったという。

 

一方、ペンバートンの住む南部には、南北戦争の後遺症に苦しむ人に溢れており、薬の需要が高かったという。コーラもモルヒネの代用品として開発されたのだった。

コカ・コーラは地元で人気になったが、その矢先にペンバートンはガンに冒され、大量のモルヒネを買う必要に迫られた。その金を工面するため、株を格安で売り出した。大人数の手に渡った株を最終的に買い占め、コカ・コーラ社を立ち上げたのがエイサ・キャンドラーだった。

 

さて、トマトケチャップの大量生産に成功し、ハインツは大企業に成長した。だが、ヒット作が生まれると類似品も出てくるわけである。粗悪な品質のケチャップが出回るようになったが、当時の法ではそれを取り締まることができない。そのため、ハインツは規制強化のために政府に働きかけたのだった。

 

こうして、規制強化が実行された結果、原料や添加物を記載する必要が生じた。その影響を受けたのがコカ・コーラ社である。不当表示で訴えられたのだ。有害なカフェインが含有されていることがそれに当たる(さらには、「コカインを含んでいないのに、コカ・コーラを名乗っている」という指摘もあった)。キャンドラーは政府と裁判で戦い続け、最終的には「カフェインの量を半分にする」という結論に至った。

 

この部分を見て「つながった!」と思わず叫んでしまった。『ザ・フード』で取り上げられている企業は全てアメリカで生まれ、アメリカの歴史と共に発展してきた。歴史に影響を受け、また他の企業の動きに影響を受けたりもする。そう、企業とはそれ単独で、外的な影響を受けずに発展するわけではないのだ。

ここではハインツとコカ・コーラの話を紹介したが、ほかにもお互いに影響を及ぼし合った例がいくつも本編で取り上げられる。コーンフレーク企業のケロッグとポスト、チョコレート企業のハーシーとマースの関係はいうまでもないが、もうひとつ意外な絡み方をする企業があり、「え、このふたつがつながるの!?」と驚き、膝を叩いてしまった。

この企業と企業の絡み合いのドラマを堪能するには、編年体スタイルが最適なわけだ。不満に思ってごめんなさい。素晴らしい編集です!

 

 

食は歴史と共に

企業の勃興に歴史的な要因は外せないものなのだなぁと改めて感じた。

第一話だと不衛生な食事情とそれによって生じた人々の病気をいかに改善するかに苦心した開発者たちの姿が描かれている。ハインツとコカ・コーラの事例はすでに述べたが、ケロッグがコーンフレークを開発したのも、もともとは病院食として出すためだったのである。

 

第二話以降は徐々に豊かになるアメリカの状況に合わせるように、嗜好品であるチョコレートの生産がハーシーやマースによって行われる。

 

 

第三話では第二次世界大戦以降、郊外の住宅地が流行したことや、車の所有率が増えたことによって、従来のレストランのスタイルが変化していく様子が紹介される。そんな中で生まれ発展したのがマクドナルドやケンタッキーフライドチキンだ。

 

ちなみに第三話の補完として、マクドナルドの誕生を描いた映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』もオススメしたい。マクドナルドをアメリカ全国に広めた男レイ・クロックの物語。『ザ・フード』と『ファウンダー』で、マクドナルド兄弟とレイ・クロックの墓描写を見比べるのもまた一興である。


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