映画っていいねえ。本っていいねえ。

映画や本の感想など。ネタバレ全開なので、ご注意ください。

映画に関する雑記(2022/03/27)

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今回は映画に関する雑記にしようと思う。観たばかりの作品から、かなり前に観賞して、少し内容はうろ覚えの作品まで。

色々とネタバレしてあるので、ご注意いただきたい。

 

 

 

実写版『ジョゼと虎と魚たち

アマプラで実写版『ジョゼと虎と魚たち』を観賞。

妻夫木くん、悪気のないクズ男子の演技が上手いよなぁと思った。妻夫木くん演じる恒夫はクズだ。刹那的な楽しさに生きて、芯がない。だけど、憎めないのだ。悪気がないからこそのピュア感というか、何というか。心にするっと入り込んでくる人なつっこさが良い。

池脇さん演じるジョゼも不思議な魅力のあるキャラだった。足の不自由なジョゼは、限られた時間帯に祖母に散歩に連れ出してもらう以外は、家にこもりっきりだ。その家も、うらぶれた狭い平屋建て。狭い世界で生きているのを象徴するのが、押し入れの周辺に積み上げられた本と、押し入れの中で黙々と読書をするジョゼの姿なのだと思う。

恒夫とジョゼが出会い、衝突を繰り返しながらも惹かれ合い、結ばれただけでは終わらないのが(恒夫とジョゼには悪いが)個人的には良かった。

気持ちだけではどうにもならないことがあるという物語には心を打たれてしまう。どうにもならない原因としては、ジョゼの障害や社会の無理解だけでなく、恒夫自身の弱さや狡さも含まれている。弱さや狡さを乗り越えろよ、と言いたくはなるが、そう簡単に乗り越えられるものではないから、人間には悩みとか罪悪感とかが付き纏ってくるわけで。号泣する恒夫の姿に、人間のどうしようもなさと、どうしようもないからこその愛おしさを感じた。

しかし、全部見終わった後にラブホでのジョゼの言動を思い出すと、胸が締めつけられそうになる。恒夫との別れを感じ取ったであろう状況で、どんな気持ちであの言葉を口にしたのだろうか。神様の気まぐれで一時的に幸せが与えられるって、結構残酷なことだよなぁと思う。あと何度か観て、色々と考えてみたい。

実写版を観た勢いでアニメ版も観たが、こちらはあまり好みの作品ではなかったなあ、とだけ。

 

 

『ディリリとパリの時間旅行』

ミッシェル・オスロ監督作品が好きなので観賞。とにかく映像が美しい!パリの魅力がこれでもかと詰め込まれていて、ひたすら眼福の90分だった。


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ベル・エポック時代のパリを舞台に、女性の抑圧からの解放や人種問題などが描かれていて、テーマとしてはかなり深い。恐らく、きっちり時代背景とか学んだ上で観れば、より楽しめるんじゃないかと思う。

ただ、「日本にいながらパリの光景をここまで楽しめるなんて!」的な観賞スタイルでも充分に楽しめる作品だった。てか、私はそのように楽しみました!(開き直り)

 

 

『黒線地帯』

天知茂様がひたすらかっこよかった!

ちょうど『ディリリとパリの時間旅行』と同じ日に観賞したのだが、こちらも私はトラベルものとして楽しんだ。何のトラベルかと言えば、終戦まもない頃の日本である。現代の人間から見ると、ある意味で外国だし異世界だ。

特にびっくりさせられたのが作中で出てくる「海軍キャバレー」の存在。この映画は1960年の作品で、まだまだ戦争の傷跡が生々しい時代だと思うのだが、すでにこういうキャバレーが出現しているというのは意外だった。ジャズアレンジされた『軍艦マーチ』が流れる中、海兵スタイルの女の子にもてなされる。ウェイターを呼ぶときは「特攻隊さーん」と叫ぶ。現代のコンセプトカフェそのものではないか、たまげた!同時に、庶民のたくましさも感じて、少し嬉しくなった。

サスペンス映画なのだが、本筋以上に50年代の日本の風景を楽しんでしまった。

 

 

『故郷よ』

チェルノブイリ原発のあるプリピャチを舞台にした群像劇。本当は単独の感想記事として書こうとしたのだが、見終わった直後にロシア軍のチェルノブイリ占拠のニュースを知って、精神的にきつくなって中止した。

この作品はチェルノブイリ原発事故そのものよりも、事故によって故郷を追われた人々の姿が主題となっている。特にアーニャという女性の生き様が印象に残った。プリピャチから外の世界へ出ていきたいと欲しているのに、結局は戻ってきてしまう。事故によって、逆に故郷との絆が深まってしまったのかもしれないと思うと、何というか、ほだしの恐ろしさについて考えさせられてしまった。

事故直前の花嫁姿の美しいアーニャから始まり、事故から数年後、心労からか目にクマができたアーニャ、恐らく髪が抜けてしまったため不自然なウィッグを付けるようになったアーニャと、時間の経過による姿の変遷も見ていて辛かった。


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