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『シック・オブ・マイセルフ』に関する愚痴まじりの感想(ネタバレあり)

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※注意!『シック・オブ・マイセルフ』のネタバレがあります。

※もともとこの記事の文章は、月1の映画館に行ってきたよ報告の一部として書きました。ただ、文字数が想定外に膨らんだため、一つの記事として独立させました。普段の感想記事の文章が常体なのに、今回が敬体なのはそのためです。修正しようかと思いましたが、変に文章のバランスが崩れても嫌なので、このままで投稿したいと思います。

 

 

あらすじ

シグネの人生は行き詰まっていた。長年、競争関係にあった恋人のトーマスがアーティストとして脚光を浴びると、激しい嫉妬心と焦燥感に駆られたシグネは、自身が注目される「自分らしさ」を手に入れるため、ある違法薬物に手を出す。薬の副作用で入院することとなり、恋人からの関心を勝ち取ったシグネだったが、その欲望はますますエスカレートしていき――。

 

引用元:映画『シック・オブ・マイセルフ』公式サイト|10月13日(金)公開

 

 

感想

正直に言うと、好きになれない作品でした。以下、その理由をつらつら書こうと思うので、この作品が好きな方にはおすすめできません。それでもOKという方だけ、グーッと下にスクロールしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言ってしまえば、クズな主人公が自業自得によって破滅するという物語ですね。お世辞にもシグネは褒められたような人格ではないし、私自身、シグネは好きになれません。とはいえ、「クズなシグネは自己承認欲求をこじらせた結果、人間関係や健康といったものを失いました。すべてを失って初めて、彼女は重病人としてセラピーグループに受け入れられました。ようやく彼女は自分の居場所を見つけたのです。皮肉ですよね」みたいな内容に不快感を感じてしまいまして。

 

現代において、自己承認欲求は良くないものという共通認識があるかと思います。注目を浴びるために過度に自分を演出したり、人に迷惑をかけたという事例は事欠きません。こじらせた自己承認欲求は見苦しいのはその通りだと思います。

ただ、どんな人も多少なりとも自己承認欲求は持っているわけです。私だって、ブログを書いているのも自己承認欲求を満たす一環であるわけですし。そういった誰もが持っている(人間である限り持たざるを得ない)汚い部分を殊更に拡大して見せて、「ほら、シグネのやっていることに心当たりはありませんか?あなたにもシグネ的なものがあるんですよ」と言われるのは、何だかなーと思うわけです。正直、私は観客に悪意を向けてくる作品が好きではありません。制作者自身が自分への怒りを向けたりといった、自省的な作品が好きです。まあ、これは完全に私の好みの話ですが…。

 

あと、「自己承認欲求をこじらせるのは良くない」という現代の共通認識を超える何かを提示されなかったのも何だかなー、と思った原因の一つかもしれません。これだけ挑戦的な内容なのに、新しい価値観とか視点を示してくれないのは何だか物足りないのです。挑戦的にやるなら、現代の倫理観を根底から揺さぶるようなメッセージが欲しかったと思います。観賞してトラウマを植えつけられた分、何か実になるものをいただきたかった。*1

この間観たラース・フォン・トリアー監督の『奇跡の海』とかは、トラウマを植えつけられつつも、「不道徳な人間として排除された主人公と、道徳的であるはずの周りの人々。本当に神に祝福されるべきはどっちなのか」と考えさせられたりしましてね…。なんか、そういうのが欲しかったです。「自己承認欲求こじらせて何が悪いんじゃボケ!そこから生み出されるものもあるんじゃボケ!自己愛は創造だ!芸術だ!」くらい言って、こちらの判断基準をグラグラに揺さぶってほしかったと思います。そういう気持ち良い敗北感を感じるのは、私、大好きです。

 

 

 

 

 

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*1:そういう意味では『哀れなるものたち』『関心領域』についても、あまり好きにはなれなかったです

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