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『ライフイズストレンジ2』ネタバレ感想⑥(エピソード5~エンディング)

※注意!『ライフイズストレンジ2』のネタバレがあります。

 

 

私の趣味で始めたゲリラ企画『ライフイズストレンジ2』ネタバレ感想も最終回である。もし良かったら、最後までお付き合いいただけると嬉しい限りだ。

 

今回は結末についても言及しています。閲覧には特に注意をお願いします。

 

 

前回の記事はこちら

nhhntrdr.hatenablog.com

 

 

 

エピソード5「狼たち」プレイ感想

法に従うか否か

リスベスからダニエルを奪還できたショーン。無事再会したディアス兄弟は母カレンの住むアリゾナ州へと移動する。カレンが暮らしている集落「アウェイ」は訳ありの人たちが集う場所。ここではダニエルも力のことを隠す必要もなく、心のままに使うことができるのだった。

 

だが、ヘイブン・ポイントでの事件で兄弟とカレンが指名手配されていることが発覚したため、ショーンたちは再びメキシコを目指すことになる。

カレンはショーンに「自分の望む道を生きてほしい」と言う。一方で、アウェイの住人デイビッド(『1』での重要人物なのだが、あの頃に比べて性格が丸くなったから、彼がデイビッドだと気づくのに時間かかっちった…)は、逃げ続けることはできないから、自由になるため裁きをきちんと受けた方が良いのではないかとショーンに語りかける。

 

法の下の裁きを受ける――「外界からの法」に従うか、それとも自分のために生きるか。ショーンに大きな選択肢が突きつけられる。

ちなみにカレンと話した際に選ぶ選択肢によっては、「父エステバンは法に従う人だった」というショーンのセリフを聞くことができる。その場合、彼女は「彼は社会を信じていたから」と言うのだが、なかなか重要な言葉であるように思う。

法を犯そうと考えたことのある人は、なかなかいないと思う。有り難いことに、私もその一人だ。だが、そんなことを考えずにいられるのも、日本がそれなりに治安も良く、何だかんだ言われてもまだ暮らしやすい国だからなのだろう。自分の住む国の法が自分を守ってくれないとき、それどころか自分たちに牙を剥いてくるとき。それでも私たちは法を犯さずにいられるだろうか。社会を信じている間はそれでも正しくいようと耐え続けられるだろうが、一度でも心が折れてしまったら、私たちは社会を信じられるだろうか。一途に法を守ろうと努められるだろうか。

 

今まさに国や法がショーンに牙を剥いている状態だ。正直に言う。初回プレイ時、私はデイビッドの言葉に納得できずにいた。メキシコに行くことしか考えられなかった。今までショーンたちが受けてきた苦しみを思ったとき、彼らは「メキシコに到着する」という報酬を受けるべきだと思っていたのだ。

 

 

アメリカに留まるか、メキシコへ行くか

車でアウェイを出発したショーンとダニエルは遂にメキシコとの国境にたどりつく。ニュースで見たことのある、あの堅牢な壁の立つ場所だ。苦労しながらも、ダニエルは力で壁を破壊する。ようやくメキシコに入国できると喜ぶ兄弟だったが、不意にダニエルが銃弾に倒れる。民間の国境警備隊の父娘が兄弟に襲いかかってきたためである。遅れてたどりついた警察によって、ショーンたちは父娘と共に投獄される。

 

牢には先客がいた。アメリカに入国しようとしたメキシコ人夫婦だ。夫婦はメキシコでの生活に限界を感じ、もうじき生まれる子供のため、アメリカに移住しようと決意したのだという。アメリカは出生地主義を取っている。親の人種や出身地に関わらず、アメリカで生まれた子供にはアメリカ国籍が与えられるという制度だ。

出生地主義 - Wikipedia

 

メキシコへ行きたいと言うショーンに、夫のディエゴは「メキシコは政情不安と貧困で悲惨な状態にある」と語る。だから、夫婦は危険を冒して国境を越えようと試み続ける。

スペイン語で会話を交わすショーンと夫婦に、父娘が罵声を投げかける。メキシコ人は問題を起こすくせに、福祉だけはちゃっかり受けている、と娘マディーが吐き捨てる(日本でも聞いたことのあるようなセリフだな)。

 

少し話はずれてしまうが、『ジョジョ・ラビット』のことを思いだした。

nhhntrdr.hatenablog.com

この映画の主人公ジョジョナチス政権下のドイツ人少年で、熱心なヒトラー信奉者だ。彼はユダヤ人を憎悪しているのだが、だからといってユダヤ人を知っているわけではない。というか、ジョジョユダヤ人とドイツ人を目視で判別できないという状態。だが、ナチスの教育によって、ジョジョの中で怪物じみたユダヤ人像が構築されていく。知らないからこそ、相手を醜悪なモンスターだと思い込む。

今回の父娘も、そんな感じだなあと思った。国境付近に暮らしているから、メキシコ人による影響を受けている。だが、個人個人のメキシコ人を知らないから、彼らをモンスターだと信じて疑わない。

ジョジョ・ラビット』の場合、ジョジョ少年がユダヤ人の少女と親交を深めることで、自分の持っていた偏見や差別心から脱することができたのだが…。

 

話を戻す。ディエゴ夫婦とマディー父娘と話すうちに知らされるのが、アメリカに留まるも、メキシコに行くも、何かしらの地獄が待っているということだ。法に縛られ差別に苦しめられても正しく生きるか、自由を手に入れる代わりに普通の日々を送ることもままならない生活を送るか。

結論が出ないうちに、ショーンは尋問のため、警官に連れ出される。尋問の最中、突如ドアが破壊される。ダニエルが助けに来たのだ。兄弟は警察署を脱出し、車に乗り込み再び国境を目指す。だが、国境のゲート付近には多くの警察が詰めていた。ショーンたちは投降するように呼びかけられる。

 

ここでプレイヤーに最後の選択肢が提示される。「自首する」か「国境を越える」か。ここで選んだ選択肢と、今までダニエルにどのようなことを言いきかせてきたかで結末が変わる。

モラルに従うよう言い続けてきた場合、自首を選ぶとダニエルは納得し、二人で警察に投降することになる。逆に国境を越えることを選ぶと、ゲートを開けるために警察を傷つけるのを拒絶したダニエルが、車から飛び降りる。結果、ショーンのみが国境を越え、ダニエルは警察に捕縛されるのだった。

モラルの低い選択肢を選び続けた場合は以下の通りだ。国境を越えることを選ぶと、ダニエルは同意を示し、警察たちを力で撥ね除けた後、ゲートを破壊する。兄弟は二人でメキシコに入国する。自首を選んだ場合、ダニエルは納得せず独断で車を走らせる。警官の銃弾が降りそそぐ中、何とかメキシコ側へ入ることに成功。しかし、ショーンは銃弾を受けており、ダニエルが気づいた頃には絶命していた。ショーンを亡くし、ダニエルはひとりきりになってしまう。

 

 

エンディング

最後の選択肢までに我々プレイヤーがダニエルをどう育てたかによって、彼の「自分のなかの法」が左右されたのだと思う。彼の「自分のなかの法」が「外界からの法」に近いものになったかどうかということが最終的に問われたのだろうな、と。

いずれにせよ、ダニエルの「自分のなかの法」とショーンの(ひいてはプレイヤーの)下した決断が乖離したときのエンディングは、どちらも兄弟の別離につながってしまって、それが何とも悲しい。

初回プレイ時、私はダニエルのモラルが高い状態で、国境を越えることを選択した。先にも述べた通り、私は何としてもショーンにプエルト・ロボスをプレゼントしたかったのだ。だが、ダニエルが車から飛び降りたとき、ぎょっとした。ダニエルの気持ちを無碍にしたことを読み取られてしまったようで、しばらくは彼に対する罪悪感に襲われた記憶がある。

6年後、ダニエルは祖父母のもとで暮らしていた。そんな彼のもとにメキシコのショーンから手紙が届く。同封されている写真のショーンは元気そうなのがせめてもの救いだ(それまでのプレイ内容によっては、キャシディまたはフィンと共に暮らしていることが明示される)。ダニエルの力なしにメキシコで身を立てるのは大変だっただろうに。無事でよかった。

 

さて、自首を選んだ場合もビターな結末なわけで。ショーンは国境での事件から15年後に釈放される。再会したダニエルと、かつて立ち寄った森のキャンプ地で一晩を過ごすのだが、そこで突如涙にくれるのだ。

この涙は何だったのだろう、と今でも考えさせられる。刑務所で消費された15年間に対する悔しさか、ダニエルの成長を見られなかった悲しみか、それともまた別の感情なのか。翌日、二人は出立する。離れゆくショーンの車を見送った後、ダニエルは一人静かに涙を流し、やがて自分も車を走らせるのだった。

兄弟の行く道が正反対であるため、恐らく二人の道はもう交わらないのだろうと思わせるエンドだ。ダニエルと離れたくないと考えていた少年時代のショーンのことを思うと、何とも複雑な気持ちになる。

 

 

ダニエルのモラルが低い場合のエンディングは、どちらもメキシコで裏社会との繋がりを持ちながら暮らしているようで、これはこれで大変そうだ。

とはいえ、二人で暮らしているエンディングは、一番ショーンの望みに近い形であるように思う。エピソード1の頃から「里子に出されたら、ダニエルと離ればなれになる」とショーンが恐れていたことを考えると、個人的にはこのエンディングが一番好きだ。

 

ショーンが死んだ場合、ダニエルがどのようにメキシコで生き抜いていたのかを考えると胸が詰まる。ショーンと違ってスペイン語ができないため、完全に力に頼る生活になっただろう。エンディングの中で「観光地でスリ多発」という新聞記事が紹介されるのだが、こうでもしないとまだ10歳の少年に生き残る道はない。その後もギャングとの関わり合いが示唆され、最後は16歳に成長したダニエルが抗争相手に襲撃されるも、易々と力でねじ伏せているシーンで終わる。

襲撃の直前、ショーンのためにつくったらしい祭壇の前でビールを飲むダニエルの様子が切ない。「RIP SEAN」と書かれた祭壇、微笑みかけようとして強ばるダニエルの顔。あんなに無邪気でやんちゃな可愛いクソガキが、本当にいなくなってしまった。それがひたすらに悲しい。ただ、本編中で何度も欲しがっていたダニエルお気に入りのお菓子「チョコクリスプ」は今でもきちんと食べていることが示されていたおかげで、あの頃の無邪気なダニエルがまだ微かながら生きているように思えた。この絶望的なエンディングにおいて、それだけは、本当にそれだけは救いに感じた。

 

 

エピソード5のショーン、ここが良い!

エピソード4が重かった分、アウェイでの生活でのびのびとショーンが暮らしている様子に、私もほっこりしましたよ。ダニエルに誘われて踊ったときの、いまいちリズムに乗り切れていない感じが犯罪級に可愛すぎますね!

あと、カレンとデイビッドが買い出しから帰ってきた後、荷物の運搬を手伝うことになるのだが、ここでダニエルの力を頼らないショーン君!三袋あるうち二袋を持つのだ。ダニエルの成長を認めてもなお、頼れるお兄ちゃんでいたいという意地を感じていじらしくなってしまった。

 

あと、メキシコに行った場合のエンディングのダニエルは、どちらもすんごく好みでした…

 

 

最後に

衝動的に始めた『ライフイズストレンジ2』の感想も、無事に終わることができた。ここまで読んでくださった方には、感謝してもしきれない。

さて、明日24日にSteamサマーセールが行われるのだが、ラインナップの中に最新作『ライフイズストレンジ トゥルーカラーズ』があると知って、今私はそわそわしている。上手く行けば、明日以降は『トゥルーカラーズ』を楽しめているかもしれない。

それはそうと、また近いうちにディアス兄弟には会いに行きたい。辛い目に会い続けた二人だが、だからこそ、忘れられない二人にもなったと思う。苦しい旅だからこそ、たまにある楽しい時間が美しく輝く。そんなことを二人に教えてもらった気がする。