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『ライフイズストレンジ2』ネタバレ感想④(エピソード3)

※注意!『ライフイズストレンジ2』のネタバレがあります。

 

 

『ライフイズストレンジ2』の折り返し地点、エピソード3の感想はじまるよー!

 

 

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エピソード3「不毛の地」プレイ感想

兄弟の軋轢

エピソード2から1カ月後、祖父母の家を発った兄弟が今いるのはカリフォルニアのハンボルト郡。ここで二人は大麻農園で働くヒッピーたちと共にキャンプ生活を送っていた。ハンボルト郡についてこのゲームで初めて知ったが、大麻生産で有名な場所だという。

サンフランシスコから北へ約480kmの場所に位置するハンボルト郡は、レッドウッドのうっそうとした森林に囲まれた、米国内でも有数の大麻生産地だ。昔から大麻の栽培地として知られるハンボルト郡は、メンドシーノ郡、トリニティ郡と共に米国最大の大麻生産地として有名な北カリフォルニアの“エメラルド・トライアングル”の一角をなす。

 

引用元:”人殺しの山”と呼ばれる、米国最大の大麻生産地「エメラルド・トライアングル」の謎に迫る | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)

学生時代の地理の授業じゃ教えてもらえない知識。いやあ、タメになった。

 

エピソード2で、ショーンたちは女性ストリートシンガーのキャシディ、彼女の相棒フィンと出会っていたのだが、偶然再会したことから農園勤務の口利きをしてもらえたとスケッチブックに記録されている。ここに至るまで、ホームレス生活をしたり、仕事にありつけたものの給料をピンハネされたりと散々だったようだ。

 

仕事仲間とも打ち解けてきたようだが、特にショーンはキャシディと仲良くなっている。一方、ダニエルはフィンを兄のように慕っているという状態。

これまで祖父母やクリスたちとの関わりはあれど、どこか兄弟二人の密室的な関係が続いてきたのだが、ここへ来て外部の人間が多数加わったことで、ショーンたちの関係にも変化が生じることになる。エピソード3は、ディアス兄弟の間で少しずつ生まれてきた歪みが最高潮に達してしまう回だ。

歪みとは、主に以下のものとなる。

  • ダニエルを子供扱いするショーンと大人として見られたいダニエル
  • ダニエルが急速に成長することで、保護者としてのアイデンティティが揺らぎつつあるショーン
  • 力の使い方に対して干渉してくるショーンに対するダニエルの怒り
  • ショーンをうるさく感じつつも、構ってもらえないことに苛立ちを感じるダニエル

個人的に、歪みの一番根底にあるのが「ショーンがダニエルを子供扱いしている」という点にあると思う。旅に出て以降、ダニエルは超能力の面でも精神的にも成長を続けている最中だ。だが、兄は一向に自分を一人前の存在として認めようとしない。ゆえにダニエルはショーンに対して反抗心をあらわにするし、自分を大人扱いしてくれるフィンの方に懐くようになる。ダニエルが離れていくことに苛立つものの、ショーンはなおもダニエルを自分の指示に従わせようと躍起になり、結果的に兄弟の溝が広がっていく。

一方でショーンはそういった歪みに無自覚ではなく、このままではいけないと感じているらしい。「ダニエルの兄」以外の自分も探そうと模索していることも作中で明言されている。だから彼はキャシディをはじめとした仕事仲間との交流を広げ、皮肉なことにそれによってダニエルはショーンに構ってもらえないという不満をためてしまう。

 

少し話が横に逸れるが、「子供扱い」というのは一種のレッテル貼りだと私は思う。ショーンはダニエルに「未熟な子供」というレッテルを貼っているのと同時に、差別主義者たちからは「アメリカに居座る異物」というレッテルを貼られている。

先日、新文芸坐で行われた『戦場のメリークリスマス』上映へ行ってきた。作品の上映後、樋口尚文さんのトークショーも開催されたのだが、そこで言われた「人はレッテルを貼られると、不自由になる」という言葉は印象深かった(だからこそ大島監督は凝り固まった作風に落ち着かず、作品ごとに大きくテイストを変えていたというような内容だったと記憶している)。現在のディアス兄弟は、貼られたレッテルによって抑圧されている状態なのだ。

 

そういうわけで、エピソード3のディアス兄弟は序盤からギスギスしている。無闇に力を使うなとショーンが注意すれば、ダニエルは自分の力なのにと腹を立てる。そんな二人の様子を見て、キャシディやフィンは「束縛しようとすればするほど、相手は逃げていく」とショーンに助言をするのだった。

 

 

アレが体験できる!

ところでショーンたちが滞在しているのは大麻農園ということで、本編中で農園での様子が取り上げられる。オーナーのメリルはきちんと仕事をする人間は評価する一方、ちょっとした厄介ごとも許そうとしない。まだ社会というものを(裏社会とはいえ)知らないダニエルは何かとメリルの怒りを買い、そのたびにショーンも一緒に睨まれる。ここでも気苦労の絶えないショーン君なのだった。

 

途中、大麻製造の工程を体験できるシークエンスがある。麻の花冠らしきものを手に取り、画面上のリズムに合わせてボタンを押すことで、ショーンがハサミを使ってトリミングをするのだ。また、トリミングを続けているとハサミの切れ味が落ちるため、定期的に水で洗う必要もある。ここでもタイミングを見計らうことを要求される。

別に沢山捌いたところでプレイヤーには旨味などないのだが、なぜか躍起になってしまった(なんだか楽しいし…)。少しでもタイミングがずれるとショーンがハサミで指を切ってしまう。指を切ればタイムロスになるし、ショーン推しとしては彼を傷つけるわけにはいかないよね!というわけで、私はここでマジになる。

私とショーンは休むまもなく大麻づくりに励んでいるというのに、他の皆の手が止まっているのはひどいと思う。特にハンナという女性はキャシディに「あんたは怠けている」と絡む割りには手を動かしてないのね。「オラ、てめえら(特にハンナ)!シャキシャキ手ぇ動かせや!」と言いたくなった、やれやれ。

 

この大麻製造シークエンス、ただでさえリズムを取るのが難しいというのに、さらに仕事仲間の雑談が始まるため、たびたび選択肢が提示される。わたわたしていると別の人物がしゃべり始めてしまい、選択肢を選ばなかったという結果となる。エピソード2までは一対一での会話が多かったため、たまの制限付き選択肢以外は焦らずにプレイできるのだが、エピソード3は多人数でのコミュニケーションとなるため、相手はこちらを待ってくれない。オタオタしているうちに、会話は次へ次へと進んでいく。リアルな世界と同じじゃないか!

というわけで、タイミング良くハッパをトリミングし、ハサミを水で洗いつつ、仕事仲間との会話をこなしていかなければならないのだ。家にいながらして、大麻製造工程を体感できるのは『ライフイズストレンジ2』だけ!(それとも、他にもこんなことできるゲームあったりするの?)

かくしてプレイヤーはエピソード3でいけない社会科見学をしてしまうのだった。

 

 

ショーンとダニエルの決裂

仕事が終わった後、ダニエルの超能力訓練に付き合うことになるショーン。ダニエルの言葉によれば、このキャンプ地に来てからは彼一人で訓練をしていたらしい。こればかりはフィンに付き合ってもらうわけにもいかないわけで。

それに、反抗期中と言ってもダニエルがショーンを嫌いになったというわけではなく、逆にショーンに構って欲しいし、ショーンに認められたいという欲求が見え隠れしているように思う。構って欲しいというのは子供としての欲求であり、ショーンに認められたいというのは大人としての欲求である。矛盾した欲求だ。

その欲求が満たされないからこそ、ダニエルのショーンへの態度が硬化してしまう。そして、ショーンは責任感の強さから、反抗的なダニエルに対してさらに口うるさくなってしまうという悪循環が生じる。

 

二人で訓練を始めてしばらくは楽しそうにしていたダニエルだったが、ショーンがまた子供扱いしたことで怒りを爆発させる。『帝国の逆襲』のヨーダばりの力をショーンに見せつけ、自分はもう子供ではないと言い捨てるのだった。

 

 

ショーンとダニエルに生じた軋轢は、エピソード3のクライマックスで極限に達する。

ダニエルが犯した失態により給料を取り上げられたショーンたち。その際のゴタゴタで、ダニエルの力がフィンたちにバレてしまう。フィンはダニエルの力を使えば、メリルの事務所にある金庫から金を盗むことができるとショーンたちに提案する。ここで「盗みに入るか否か」という選択肢を選ぶことになるが、どちらを選んでもフィンとダニエルは窃盗のため、メリルの事務所に向かってしまう。

フィンたちを止めに、またはフィンたちと共に盗みに入った先で、ショーンはメリルに発見され、銃を突きつけられる。そこでダニエルの力が暴走し、メリルだけでなく、ショーンも巻き込まれてしまうのだった。

 

今回、私はキャシディと恋人になり、フィンからの窃盗の提案を断るというルートをたどった。また、メリルに銃を突きつけられたとき、ダニエルに力を使うように命じない選択肢を取った。その結果、メリルがフィンを銃殺。ダニエルはフィンの死のショックにより暴走する。このとき、ダニエルはショーンがキャシディに夢中になっていることを責め、ショーンを奪ったキャシディを力で攻撃するという展開になる(キャシディ、申し訳ない…)。

このルートでは、ダニエルの不満が明確になったように感じた。ショーンもダニエルも、お互いのことを大切に思っているが、その気持ちが相手に届かず、理解されないことでフラストレーションがたまっていく。その悲劇が描かれたのがエピソード3だったように思う。フィンやキャシディが言っていた「束縛すればするほど、相手は逃げる」というのがすべてだった。この言葉はショーンにも当てはまるが、同時にダニエルにも当てはまっていたように思う。

だが、束縛しないというのは相手を信頼するということが必要で、そのためには自分自身が心を強くする必要があるのではなかろうか。ショーンがダニエルへの子供扱いをやめられなかったのも、ダニエルがショーンに大人扱いしてもらいたいと願う半面で甘えることをやめられないのも、相手を信頼するという行為が難しいからだろう。

 

とあるシーンの選択肢でメリルへの愚痴を選ぶことができる。それを聞いたフィンは、メリルにも上司がおり、上から締め上げられていること、そのためにイライラしているのだということをショーンに告げる。呆れたショーンは思わずこんなことを言う。

イライラぶつけても人は動かねえのになあ

まさにショーンとダニエルの関係にも当てはまることだ。わかっていても、自分のこととなると冷静に見ることができない。人間関係って難しいよなあ、と改めて感じさせられた。ちなみにここ以外でも、こういった「実は自分にも当てはまっているよね」というセリフが出てきたりして、本当にこの作品の脚本は上手くできていると感じさせられた。

 

 

翌朝のシーンで、荒れ果てた事務所の中が映し出される。ダニエルの姿はなく、キャシディと共にショーンも気絶していた。彼の左目には硝子の破片が突き刺さっており――ということろでエピソード3は終了。

エンディングで流れる以下の曲、ショーンの痛恨の気持ちが表れているようで、聞いていると切なくなってくる。ショーン受難の時の始まりだ。


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エピソード3のショーン、ここが良い!

朝に弱いショーンが可愛い。エピソード2でもそうなのだが、彼がダニエルより早く起きるシーンが全くない。エピソード3ではうっかり寝過ごして仕事に遅刻しかけるというシーンすらあるのだ。真面目なのに朝起きられないショーン君。お兄ちゃんの権威も失墜である。ああ、可愛い。


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ショーン遅刻のテーマ

 

あと、ダニエル。反抗期まっただ中でも、お手伝いを頼んだら喜んで請け負ってくれるところが可愛い。きっとお兄ちゃんに頼られると嬉しいんだろうなあ。

 

 

 

 

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