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戦メリ原作者L・ヴァン・デル・ポストの『新月の夜(The Night Of The New Moon)』を読む【14】

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※注意!The Night Of The New Moon『新月の夜』『影の獄にて』『戦場のメリークリスマス』のネタバレがあります。

 

※前回の記事はこちら

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The Night Of The New Moon『新月の夜』感想⑭

広島に原爆が投下されたことをニュースで知った「私」たち。しかし、日本軍の兵たちに何かしらの変化が起こった気配もない。さて、日本軍は大人しく降伏するのか、それとも「私」が恐れている通りに、捕虜たちを虐殺した後に玉砕するのかといった状況が続く。

 

日本軍の兵士たちに変化が見られないのは、恐らく戦局が芳しくないことや、日本の本土に新型爆弾が落とされたことについて、前線には伏せられていたからなのだろうことは、何となく想像がつく。何しろ、未だに「大本営発表」という言葉が皮肉として通用しているぐらいである。

また、日本が降伏するか否かに関しての意見については、陸軍内部でも一枚岩ではなかったことは、『日本のいちばん長い日』や最近の作品では『アナウンサーたちの戦争』でも描かれていたな、とふと思う。

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ゆえに、当時の日本軍内部の情報は、かなり錯綜していたのだろうと思う。いわんや、本土から遠く離れたジャワ島をや。

 

色々と「私」は思考を巡らせるが、遂に日本軍の将校から呼び出しを受ける。そこで日本軍の将校たちと「私」が対面するわけだが、このシーンに至って、それまで緊迫していた雰囲気から一気に清々しい空気へと切り替わっていく。

このときの日本軍将校の言動に関しては、まさに「憑き物が落ちた」と表現するのがふさわしいだろう。「私」が言及していた、長年にわたって蓄積されたアジア人が西洋人に抱く恨みや憎しみが溶けてなくなったかのような。

 

『戦メリ』のように劇的なふれ合いがあったわけではない。ただ、敵対する者同士の背後にまとわりついていた歴史的怨念が剥がれ落ちた瞬間のこの清々しさ、爽やかさは個人的に忘れがたいものとなったような気がする。

 

さて、この後、仲間たちと共に収容所を出て、故郷へ向かうところで『新月の夜』の本編は終了する。次回はエピローグを取り上げて、この一連のシリーズを終えようと思う。

 

『新月の夜』から見えてくる『戦場のメリークリスマス』の側面⑭

今回も、ここはお休みします。

 

(【最終回】に続く)

 

 

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