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『ライフイズストレンジ2』ネタバレ感想③(エピソード2)

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※注意!『ライフイズストレンジ2』のネタバレがあります。

 

 

引き続き、『ライフイズストレンジ2』の感想です。個人的にエピソード2のショーンは特に好みですよ(どうでもいい情報)。

 

前回の記事

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エピソード2「ルール」プレイ感想

二つのルール

エピソード1から時間が経ち、ショーンたちは冬のオレゴンで潜伏生活を送っていた。無人の家に滞在しながら、ショーンはダニエルの超能力制御のための特訓に毎日付き合う。エピソード2開始時では特訓の結果、そこそこ大きい石を持ち上げることはできるようになっている。

安全な居場所で暮らしていた兄弟だが、ダニエルが風邪をひいたため、ショーンはここを発ち、少し離れた場所にいる母方の祖父母を頼ろうと決意する。彼らとは母の失踪後、没交渉になっていた模様。

久しぶりに姿を見せたショーンたちを受け入れる祖父母だが、彼らはすでに警察から事件について聞かされていた。特に厳格な祖母は、ショーンに対して無実なら何故逃げたのかと問いかけるが、最終的には兄弟の滞在を許可する。

 

「ルール」というのがサブタイトルのエピソード2。ここでは二つのルールが出現する。兄弟は警官殺害事件の容疑者として追われていることを前提にしたもので、内容は以下の通りだ。

  • ショーンがダニエルに課すルール(むやみに力を使うな、他人に力のことを知られるな)
  • 祖母が兄弟に課すルール(外に出るな、電話とインターネットは禁止など)

一通りクリアした上で思うのは、「ルール」というのが最後まで兄弟について回るという点だ。エピソード2でのルールは外界に適合するためのものだが、終盤になればなるほど、従うルールというものが自分の内部にあるものへと変化していく。

当ブログでたびたび取り上げている『戦場のメリークリスマス』の原作『種子と蒔く者』に「自分のなかの法(inner law)」という言葉があるが、『LIS2』の終盤で問われるルールのことも今後は「自分のなかの法」と表現したい。対してエピソード2で出されるルールというのは「外界からの法(outer law)」とでも言うべきか。

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では「自分のなかの法」って何なんだとなると、『戦メリ』を知っている人ならセリアズがヨノイにしたキスのことを考えると良いと思う。あのキスはセリアズが生きた文化からも、収容所内のルールからもタブーとされていることだ。だが、仲間やヨノイを救うため、セリアズは「自分のなかの法」に従い、ヨノイにキスをし、彼の狂気を止める。

 

もうひとつ『バスターミナル 死の真相』というドキュメンタリーも例に挙げさせていただきたい。

内容は以下の通り。

イスラエルで2015年に起きたテロ事件を、監視カメラ映像と目撃者のインタビューだけで検証。無実の人が犯人と疑われて集団リンチを受けた「群集心理の狂気」が浮き彫りに。

鳴り響く銃声によって修羅場と化す、ごく平凡なバスターミナルの光景。居合わせた兵士や看護師らが恐怖心や混乱ぶりを語る序盤から、1人の男が群集に暴行を受けるシーンに焦点が移っていく。互いに異なる証言から浮かび上がる真相とは? 

 

引用元:バスターミナル 死の真相 | BS世界のドキュメンタリー | NHK BS1

バスターミナルでテロが起き、人々がパニックに陥る中、ひょんなことから無実の男性がテロリストだと勘違いされ暴行を受ける。ヒステリー状態の人々が次々に暴行に加わり、あっという間に凄惨なリンチへと変じてしまう。

そんな中、一人の青年が被害者と群衆の間に割って入る。青年はヒステリーに駆られた人々に怖じ気づくことなく、被害者を庇った。

これぞまさしく、青年が「自分のなかの法」に従った瞬間なのではないかと私は思う。ともすれば彼までもリンチの対象となりかねない状況にもかかわらず、その場の空気という「暗黙のルール」に流されず、我を失った群衆から被害者を守ろうとしたのだ(残念ながら、被害者は結果的に亡くなってしまったが)。

 

「外界からの法」は法律であり、所属するコミュニティにおけるルールであり、その場の空気である。もちろん、これらが無用なもののわけでは決してなく、秩序ある環境をつくる上で必要不可欠なものだ。だが、人間は無謬な存在ではないわけで、そんな人間が作り上げるルールが誤ることだって多々あるわけだ。そういうときにリスクを恐れず「自分のなかの法」に従ったのがセリアズであり、バスターミナルの青年だったのだと私は思う。

 

話を元に戻そう。エピソード2において、ショーンやダニエルは上述のように「外界からの法」を課されるわけである。

少々不満を感じながらも、ダニエルとショーンは祖父母の家で平和な日々を過ごす。さらに隣にダニエルと同い年のクリスという少年がいることも判明。兄弟はすぐにクリスと仲良くなる。


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(あんまり関係ないけど、45:37辺りのショーンが物凄く好きだ。謎ポーズ可愛い)

 

クリスへの嘘

さて、このクリス少年はスピンオフ作品『The Awesome Adventures of Captain Spirit』の主人公である。クリスが兄弟と出会った日、彼らに出会う直前まで何をしていたかが描かれている。


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スーパーヒーローが好きで夢見がちなクリスだが、母を事故で亡くし、現在は父との二人暮らし。父は(恐らく母の死以降)酒に溺れ、しばしばクリスに当たり散らし、暴力を振るっていることすら示唆されている。基本的にはクリスを愛しているのだが、酒に溺れるとどうしても自分を止められないようなのだ。

おかげでクリスは年相応の無邪気さを持つ一方、父に対して気を遣い、体調を心配するような思慮深い一面も見せたりする。父の前で母の死を嘆くようなことも、彼はしようとしない。誰の目も届かぬ場所でようやく、母との思い出の品を見ながら涙を流すことしかできずにいる。スーパーヒーローが好きな夢見がちな少年という面ではダニエルに似ているが、年齢不相応の責任を負わされているという面ではショーンとの共通点もあるように思う。

 

エピソード2後半ではクリスとその父との関わりがメインとなってくる。ダニエルは不慮の事故からクリスを救うため、咄嗟に力を使ってしまう。幸いダニエルの力についてはバレなかったが、代わりにクリスは自分自身に超能力があると勘違いしてしまうのだった。スーパーヒーローのような力を持ったと思い込むクリスに本当のことを明かすかどうか、ショーンとダニエルに選択肢が突きつけられる。


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上の動画でクリス問題が取り上げられているのだが、名越先生の言葉が興味深い。

「自分は力があるからお父さんとの辛い生活も続けていける」って所までちょっときてるやん(17:37~)

だからこそ、クリスの希望を取り上げて良いのだろうかが悩ましいわけだ。だが、クリスが思うように力を使える(と思い込める)のはダニエルと一緒にいるときだけだから、ダニエルの嘘は早かれ遅かれバレてしまう。だが、幼いダニエルにはまだそこが見えない。

 

ところでエピソード2ではプレイヤーがダニエルに対し、ルールを守るような選択肢を選び続けるか否かで、結末が変わってくる。ここでも「クリスに嘘を言うのをやめるかどうか」という重要な選択肢が突きつけられ、これがエピソード2の結末に関わってくる。

 

祖母の変化

クリスたちと別れて家に帰った後、ダニエルはショーンに母の部屋を見たいと言い出す。この部屋は祖母によって鍵をかけられ、入られないようになっていた。祖父母もまた、母の失踪によって傷ついていたのである。

物心ついて以降に失踪され、母に対してわだかまりを持つショーンに対し、ダニエルには母の思い出がない。だからこそ、彼はショーンと違い、母の部屋に執着する。


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上の動画1:29~、ダニエルがショーンに「部屋を見たい」と言い出す部分で、この辺についても名越先生のコメントが面白い。個人的にはやっぱりエピソード1からダニエルが言っていた「赤ん坊扱いしないで」という言葉を思い出す。父の死と同じく、母の失踪という事件からも疎外されていたダニエルだが、名越先生の言葉を借りれば「自分の責任として」母の部屋を見ようと決意するわけだ。責任を取るというのは子供ではなく、大人としての行為だ。

ショーンはダニエルを守るべき存在として(ある意味で弱者のように)扱うわけだが、気づかぬうちにダニエルも成長していたというのがわかるシーンなのだと思う。

 

その後、母の部屋を探っていたことが祖父母に知られ、ひと悶着が起こったりもするのだが、和解しかけた頃に警察がやって来る。二人を見かけたとの通報を受けたのだという。

上の動画の11:11~16:30の部分をぜひ見ていただきたい。それまでショーンたちに「外界からの法」を課していた祖母が一転して、彼らを警察から守ろうとする。この辺りの名越先生の解説は必聴だ。さらに私なりに言わせていただけるなら、ここは祖母が「自分のなかの法」に従った場面なのだと思う。

 

成長途中のダニエルの苦悩

さて、先ほど「クリスに嘘を言うのをやめるかどうか」との選択肢があると述べた。きちんとデータを見ていないので確実なことは言えないが、私がプレイした感じだと、エピソード2においてプレイヤーがダニエルにルールに従うように命じてきたかどうかで、上記の選択肢の後の展開が変わるようだ。

 

ルールに従わせてきた状態でクリスに嘘を言うのをやめるように命じなかった場合、展開は以下のようになる。

祖父母の助けによって家を出た兄弟だが、彼らに気づいたパトカーが追いかけてくる。その場に居合わせたクリスは、超能力を使って兄弟を救おうとパトカーの前に飛び出す。ルールを守るように言われ続けたダニエルは友人の危機に瀕しても力を使うことができず、クリスはパトカーに跳ねられてしまう。

 

一方、嘘を言うのをやめるようダニエルに命じた場合、クリスは落ち込みつつも現実を受け入れる。そして彼は逃亡中の兄弟を見つけ、抜け道を教えるという手段で二人を救うのだった。

 

また、ルールを押しつけなかった場合、ダニエルはクリスがパトカーに轢かれそうになったときに独断で力を使用し、パトカーをはねのける。その結果、クリスは超能力が自分のものではなく、ダニエルのものだと気づくことになる。ちなみに、上の動画はこのルートをたどっている。

(この辺、分岐の仕方はきちんとデータを取っていないので、間違っていたらすみません…)

 

特にクリスが轢かれるルートは、ダニエルの中での「外界からの法」と「自分のなかの法」の相克が見られるように思う。で、まだ幼いダニエルは「外界からの法」に屈してしまうわけだ。

「自分のなかの法」なんて簡単に言ってはいるが、これを築き上げるのにどれだけの年月、どれだけの経験が必要なことか。難しい話だなぁと思う。

 

ちなみに今回はクリスに抜け道を教えてもらうルートを選んだ。この場合、クリスがいつも羽織っていたヒーローマントをダニエルに贈ってくれる。あの無邪気だったクリスが現実を受け入れ、大人への一歩を踏み出した場面のように思えて、おばちゃんは目頭が熱くなるのだった。

 

 

力関係のねじれ

さて、次回エピソード3ではダニエルが反抗期に入るのだが、そこで目立ってくるのが兄弟間のねじれだ。

ショーンは年長でダニエルを保護する役目を負っているが、ダニエルの力は日に日に成長し、コントロールも上達する。保護されるはずのダニエルがショーンより強いという、逆転した関係となってしまう。

その予兆がエピソード2から散見されているのが面白い。ダニエル自身は何も感じていないようだが、ショーンが気にしているような描写があるのだ。ひとりきりのとき、自分もテレキネシスが使えないかと石に向かって手をかざしたり、うっかりダニエルに「強くなった気分はどうだ?」と聞いてしまったり。


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上の動画で名越先生がショーンについて「守るものがあるから頑張れる」と言っている。実際、理不尽な差別を受けたり、不便な潜伏生活をする中で、それでもショーンが心折れない理由の一つとして「ダニエルを守りたい」という気持ちがあるように私も思う。本編で描かれないエピソードとエピソードの隙間の部分を見ることができる「ショーンのスケッチブック」というコンテンツがあるのだが、その記録を見るに、ダニエルの力が発覚して以降もショーンは体を張って弟のために食糧を確保したりしてきたようだ。

うざったく感じる相手であると同時に、旅を続けるモチベーションでもあったダニエルが、自分の庇護を不要とする日が来るのをショーンが恐れているように感じたりもした。完全な私の下衆の勘ぐりではあるが。

 

 

エピソード2のショーン、ここが良い!

むやみに力を使うなと命じているのに、ダニエルは面白がって力を使ってしまう(あと、クリスの件とかね)。エピソード1はダニエルの機嫌を取るのに苦労していたショーンだが、今度はダニエルの暴走に悩まされる。おかげでショーンが眉間を押さえるシーンが多くて、苦労人な彼が好きな身としては非常に楽しませていただきました!

ショーンが悩めば悩むほど、萌えてしまってすみません。この辺りはまだコメディチックに楽しめる部分もあるなぁ、と。後半エピソードになると、シリアズもシリアス、どシリアスになっちゃうので、このノリは結構貴重だと思う。

 

 

※続きはこちら

nhhntrdr.hatenablog.com

 

※『ライフイズストレンジ』第一作目の感想はこちら

nhhntrdr.hatenablog.com

 

 

 
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