映画っていいねえ。本っていいねえ。

映画や本の感想など。ネタバレ全開なので、ご注意ください。

本や映画を紹介しつつ、私の三国志遍歴を辿ってみる

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突然だが、三国志が好きだ。ガチ勢と名乗るのは憚られるが、赤壁や官渡に行ったことがあるレベルにはファンである。

 

 

 

ファーストコンタクト

そもそもの出会いは高校生のとき。その頃の私は『彼氏彼女の事情』を読んでいた。手元にないので確かなことが言えないが、6巻の巻末だったと思う。おまけページで作者の津田雅美さんが三国志について語っていたのだ。津田さんの三国志との出会いは日テレ版『三国志』。

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津田さんはここで、登場人物のひとり・諸葛亮(孔明)を見たときの衝撃を語っていた。軽く説明すると、孔明は後述する蜀という国の建国者・劉備の参謀的存在だと考えておけば恐らくOKだ。

それはさておき、三国志である。古代中国が舞台である。それなのに、孔明はビジュアル系ばりのアイシャドーメイクをほどこしていたのだ。

 

アイシャドー孔明!それまで孔明なんて存在を知りもしなかったのに、急激に私は興味をそそられていく。そして幸か不幸か、なぜかよくわからないが、世界史の先生が授業でアイシャドー孔明版『三国志』を見せてくれたのだ。

うわー、すげー!このアイシャドー兄ちゃん、曹操を手玉にとる超人ぶり。かっこいいぜ!

 

 

北方三国志で沼にはまる

ここで興味を持ったものの、長くは続かなかった。受験勉強でそれどころではなかったのだ。

次に私が三国志と出会ったのは大学時代。ちょうど北方謙三版『三国志』の文庫本リリースが始まり、本屋の新刊コーナーに置かれていたのである。

 

今思うと、とんでもない『三国志』入門をしてしまった。吉川英治版か横山光輝版から入れよ!

というのも、北方三国志はオリジナル要素が多い。一般的に語られる三国志の物語と異なっている部分が多いのだ。北方版読者が吉川版読者と会話をすると、噛み合わない部分が出てくると思われる。

 

とにもかくにも、私は北方謙三版によって本格的に三国志と接触した。

三国志ファンの多くが、最初にどの作品に触れたかによって好きな人物とか三国志観が決まって来るようだ。私も例外ではない。桃園の誓いなんてないし、呂布は命乞いをしない孤高の存在だし、司馬懿はドM気質の変態だ。そして、孫策と周瑜がめちゃめちゃかっこいい!北方三国志で私はすっかり孫策・周瑜の主従コンビに夢中になってしまった。

 

三国志を知らない方のために軽く説明をしておく。三国志とは古代中国にて統一帝国が崩壊し、魏・蜀・呉の三国に分かれた前後の時代を扱っている。そのうち呉建国のための基礎を築いたのが孫策と周瑜である。イケメンコンビとして知られていて、しかも二人とも若いうちに非業の死を遂げるという悲しくもドラマチックな人生を送った。

 

もともと孔明を求めて『三国志』を読んでいたのに、どういう了見だ。七巻の周瑜があまりにもかっこよくて、ずるずると沼にはまってしまったのだ。そして気づいたら、孫策のことも大好きになっていたのである。

 

 

「呉作品」を漁る

かくして私の三国志作品漁りの方針が決まった。孫策と周瑜がフィーチャーされている作品を観たい、読みたい!

 

しかし、なのである。三国志において呉という国は不遇だ。中国にしろ日本にしろ、三国志といえばまっさきに取り上げられる国が蜀だ。これは娯楽作品としての三国志が広まるきっかけとなった『三国志演義』で主役に据えられているのが、後に蜀の初代皇帝となる劉備だからである。次に取り上げられるのが、劉備のライバル的ポジション・曹操が礎を築いた魏。呉は二国の間でふらふらしているピエロ扱いだ。ぐぬぬ。

 

そういうわけで、呉の人物が主役になる作品は少ない。その分、たまに見つかる呉メインの作品はレッドリストの動物ぐらいに貴重なのである。

 

 

三国志にハマった辺りで出会った呉メインの作品が、藤水名子『赤壁の宴』。

周瑜を主役に孫策との関係を描いている話で、今でいうBLチックな作品だ。一応、そういう関係にまではならないのでブロマンスにカテゴライズされるのかもしれないが、周瑜は孫策のことしか考えておらず、それでいて男同士だから素直になれないという、「明らかに周瑜、孫策に恋してるじゃん!」な内容だ。

腐女子の素養のある身だったので、拒否感を感じることはなかったが、「すごい。一般小説で、こんなやおい描写(年がバレる……)があるなんて」と驚いたものだ。

周瑜の妻・小喬が健気でかわいいのだが、何しろ彼女の夫は孫策しか見えていないので、とっても不憫な存在だった。さらには若くして未亡人になるのが確定しているので、不憫さの倍率ドンである。

 

 

また、朝香祥『かぜ江シリーズ』にもお世話になった。

やはりこちらも孫策と周瑜のブロマンスもの。巻によっては孫策が死んでいて、出演シーンがなかったりする。

コバルト文庫の作品なので、とても読みやすく、イラストも美しい。呉が好きなオタク女子だった私の心にクリティカルヒットしたシリーズだ。北方三国志の美形でダンディな周瑜に対し、こちらの周瑜は物腰やわらかでおっとり、そして考えが読みづらい。作者の朝香氏自ら「頭ちゅーりっぷ」と評していたレベルだ。あまりにも自分の考えを表に出さないので、苛立った孫策と軋轢が生じたりもする。

シリーズ第一作『旋風は江を駆ける』は二冊がかりで孫策と周瑜の衝突から和解までを描いた物語だ。途中、読んでいて胸が痛くなるが、その分ラストは爽快感があるので、後味はとても良い。

ちょっと大人の事情とかが絡んでいるようで、後に新作が角川ビーンズ文庫から出たりもした。改めて新シリーズが始まるのかと期待したが、一冊だけだったので残念だ。孫策・周瑜の少年期から青年期に移ろうとしているあたりの話で、やはり大人になることの苦さが繊細に描かれている。

 

そして、ビーンズ版から10年後、一般文芸として新作が発表された。

これが実質、最終巻になっている模様。周瑜の死が描かれている。紆余曲折あるシリーズだったが、推しの最期を看取ることができたのは良かった。

 

 

呉メイン以外も漁ったよ!

さて、北方三国志を読んでいる辺りで、友人に『STOP劉備くん!』を貸してもらった。

劉備を中心としたオールキャラの四コマ漫画で、これもまた読みやすい。刊行当時の時事ネタもふんだんに取り入れられている。

 

さて、『STOP劉備くん!』を読んでいると「『江森三国志』のパロディネタ」が多いことに気づく。読み進めるごとに『江森三国志』という作品が気になって気になって仕方がなくなる。

 

 

江森三国志。正式名称は『私説三国志 天の華・地の風』で、著者が江森備氏だから通称が「江森三国志」なのである。先に藤版三国志『赤壁の宴』を挙げ、「BLチックな作品」と紹介したが、こちらはBLそのものだ。

ボーイズラブなんて言葉もない時代、「耽美系」という言葉が主流だった頃に刊行されていた雑誌「小説JUNE」発祥の耽美で濃厚な三国志だ。(ちなみに私は「やおい世代」のため、「耽美」については詳しくありません。悪しからず……)

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しっかり男性同士での性行為描写があるので、人を選ぶ作品で、万人にお勧めはしがたい。ただ、歴史の裏をついたり隙間を縫うような独自解釈が冴え渡っていて、かなり独創性の高い、読み応えのある一本となっている。私は周瑜の末路に泣いてしまいました。推しがかわいそすぎる……。

 

この間、コーエーの『真・三國無双』シリーズにもどっぷりハマった。ちょうど『2』がヒットしていた頃で、バイトを入れまくり、PS2とソフトを買い、指が痛くなるレベルまでプレイしたものだった。

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シミュレーションゲームが出ているのはよく知っていたが、まさかアクションゲームが出ているとは!当時の私にはものすごく衝撃的だった。

本で読んだ『三国志』の武将たちを操作して、アクションできるなんて。夏侯惇が、周瑜が、趙雲が、私の操作のもとでフィールドを駆け回っている。まるで夢のよう……。そんなことを思いながら、私はこちらに襲いかかる雑兵たちをバッタバッタと斬り捨てていったのであった。

 

 

『レッドクリフ』がやって来た!

さて、少し時間がたち、00年代半ば。ビッグプロジェクトの情報が耳に飛び込んだ。三国志の映画制作が決まったのだという。

あー、はいはい。劉備たちが主人公のやつね。呉が冷や飯食う系の作品ね。斜に構えていた私だったが、とある情報を聞いて瞬時に居住まいをただした。

映画は赤壁の戦いを扱い、主役は周瑜。

推しが、ビッグプロジェクトの主人公!?もう私は落ち着かなくなって、これは夢なのではないかとか、計画が頓挫してしまうのではないかとやきもきしていたが、無事、杞憂に終わった。

 

映画『レッドクリフ Part1』の公開である。

夢のような時間だった。大画面で周瑜が、仲間たちが活躍を繰り広げる。さらには、周瑜と孔明が友情を育むのがいい。一般的な三国志では、周瑜は孔明の才能に嫉妬し、孔明を殺そうとしては裏を掻かれ、最後には憤死してしまうという展開が描かれる。

だが、私の三国志入門書となった北方版では二人がお互いの才能を認め、ライバルでありながらも友情を結ぶのだ。北方版と同じ、友情を育む二人が描かれていて、私はとても満足したのだった。

 

そして、数ヶ月後に公開された『Part2』は、クライマックスのシーンに圧倒された。三国志最大と言われる戦い・赤壁の戦いが、ド派手に描かれる。なにしろ、中国の人民解放軍の協力を得た上での撮影であり、迫力がものすごい。

個人的に、この作品ほど雑兵の痛みを感じられた三国志はない。今まで武将たちの強さを示すためでしかなかった無名の存在の、苦しみや悲しみが、派手なアクションシーンの中からも伝わってくる。戦いの終わり、周瑜が呟いた言葉があまりにも重く、ただ観ていて楽しいだけの映画に終わらなかった。

 

 

最後に

さて、この後は小説や漫画よりも専門家による新書や選書を読むのにハマったため、あまり00年代後半から今にかけての作品については詳しくないので割愛する。

あ、でも宮条カルナ『みんなの呉』、佐々木泉『江南行』は非常に楽しませてもらった。『みん呉』は今でも続刊が出るのを待っているので、作者様、なにとぞ、なにとぞ、よろしくお願いします。

 

 

あと、カレー沢薫『バイトのコーメイくん』、酒見賢一『泣き虫弱虫諸葛孔明』には爆笑させていただいた。三国志作品に限らず、作者のセンスが暴走している作品は大好きだ。

 

 

 

私の三国志遍歴を書くのに重点を置きすぎて、三国志を扱うにあたり避けられない「正史と演義の違い」とかはすっ飛ばしてしまった。この辺は詳しく解説しているサイトや動画がたくさんあるので、検索していただいたほうが良い。

shuchi.php.co.jp

 

さて、色々と偏った内容になったが、私の三国志遍歴を勝手に披露させていただいた。ここで挙げたもの以外にも『蒼天航路』や『秘本三国志』など名作が多いので、ぜひぜひ三国志の世界に触れてみてほしい。ゲームや漫画といった手を出しやすいジャンルの作品も多いので、カジュアルに手を出し、そして気づかないうちに沼にはまると良いと思いますよ!

 

 

なお、孫策や周瑜は呉が建国される前に亡くなった人物なので、厳密には「呉の人間」と言うべきではないのかもしれないが、ややこしいので「呉の人間」と表現させていただいた。今後も三国志について扱い記事がある場合、同じスタンスで記述させていただきたい次第である。

 

 

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