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30万円を使って大塚国際美術館に一週間籠もりたい

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今週のお題「30万円あったら」

 

 

30万円分自由に使えるのなら、私は大塚国際美術館に行きたい。徳島県にある日本最大級のあの美術館である。過去に米津玄師さんが紅白に出場した時には大塚国際美術館美から中継をしていたので、知っている方も多いと思う。

 

公式サイトで紹介されている美術館のコンセプトは以下の通りだ。

館内には、6名の選定委員によって厳選された古代壁画から、世界26ヶ国、190余の美術館が所蔵する現代絵画まで至宝の西洋名画1,000余点を大塚オーミ陶業株式会社の特殊技術によってオリジナル作品と同じ大きさに複製しています。それらは美術書や教科書と違い、原画が持つ本来の美術的価値を真に味わうことができ、日本に居ながらにして世界の美術館が体験できます。

 

引用元:コンセプト|大塚国際美術館の特徴|大塚国際美術館 - 四国 ・ 徳島県の美術館 観光施設 -

この通り、古今の絵画の複製品が多数展示されている。複製品ではあるが、大きさや色彩などが克明に再現されているため、目にしたときの感動といったらない。しかも、本物の絵画とは違って間近で鑑賞できるのだ。あのモナ・リザだって、大塚国際美術館なら心ゆくまで眺め回せるわけである。

 

 

私がこの美術館に行ったのは、過去に一度だけ。その当時暮らしていた地域でバスツアーが開催され、目的地が徳島県だったことがあった。昔のことなので詳しくは覚えていないが、鳴門の渦潮を見たり、徳島の名物グルメを食べたり、その他観光名所に行ったりという盛りだくさんなツアーだったように記憶している。そのツアーの行程の中に大塚国際美術館も組み込まれていたのだった。

 

いざ美術館に着くと、バスガイドさんは言った。「ここで2時間の自由時間を取ります。2時間後に、この場所に集合してください」

というわけで、我々ツアー客は美術館のロビーに放り出されてしまった。どのルートで巡るかなど、完全に客任せである。このとき私は両親と来ていたので、当然のように三人で気ままに館内を回ることにした。悲しいことに、私も両親も美術については全く詳しくない。何を見るかとの目的もないまま、ふらふらと歩き始めた。

 

現在ではどうなのかわからないが、その当時は時代ごとに絵画が展示されていた。ルートに入った直後は古代の壁画が展示され、まるで自分自身が古代遺跡の中にいるような感覚を味わえる。やがて時代が積み重なっていき、中世、ルネッサンスと移り変わっていく。歴史が好きだったため、絵画を通じて人類の歴史を体感できるという展示スタイルにはすぐに夢中になった。

夢中になると周りが見えなくなる性分のため、私は絵画ひとつひとつを舐めるように見つめた。ローマ時代の壁画とか、中世の教会美術とかを間近で見られる機会なんてそうそうないわけで、興奮せずにはいられない。なんて素晴らしい空間なんだ。ずっとここで過ごしていたいと、私は心から願った――のだが、私の両親がそれを許してくれなかった。

「ほら、次行くで」「早よしいや」

まだまだじっくり見たいのに、両親が急かしてくる。いやなの、ゆっくり見せろなの、と抵抗するも、結局私は引きずられて先に進まされることになった。

 

そもそも大塚国際美術館の美術品の総数は千点を超えており、2時間では十分に見られるものではない。しかも、超スピードで館内を巡る両親に引きずり回されたおかげで、私としては不完全燃焼といったところである。

本来2時間では足りないはずが、両親の超スピード観賞のおかげで我が家は早々にロビーに辿り着いた。まだまだ集合までに時間がある。

「あ、あそこで休憩できそうやん」

母が指し示した場所にはベンチが並べられていた。この場所こそが米津玄師さんが紅白歌合戦の時に「Lemon」を歌った場所システィーナ・ホールである。その名の通りここは、バチカン市国にあるシスティーナ礼拝堂の内部を再現した場所。壁や天井にミケランジェロの名画「天地創造」や「最後の審判」が描かれているところまで本物に寄せているという凄まじい空間だ。

何という神聖な空間だろうか。本やテレビで目にしたシスティーナ礼拝堂に限りなく近い場所に私は立っている…。

などと感動していたのだが、ベンチの上で知り合いのおっちゃんが爆睡している姿を見て、ヒュンと気持ちも冷めてしまった。崇高なシスティーナ礼拝堂と知り合いのおっちゃんという日常の象徴的存在のアンバランスさよ。そのアンバランスさに私はついて行けずに呆然とした。だが、両親はそれを気にする様子もなく「あー疲れた疲れた」と言ってベンチに腰かける。なあ、ここシスティーナ礼拝堂(を再現した場所)やで、父ちゃん、母ちゃん。

やがて、他にも観賞を終えた近所の家族連れがやって来て、ベンチに腰かけていく。そんな家族連れの奥さんたちと母が井戸端会議を始める。システィーナ礼拝堂があっという間に私の日常で埋めつくされていく。雰囲気もへったくれもあったもんじゃねえ。

そういうわけで私はせっかくの大塚美術館の滞在時間の何割かを、爆睡するおっちゃんを眺めつつ奥様方の井戸端会議に耳を傾けることに費やした。

 

 

いやあ、勿体ない!今考えても勿体ない!未だに私の中にはあのときの不完全燃焼感が残っている。

もし30万円あるのなら近くのホテルに連泊して、一週間ぐらいあの美術館に通いたい。ひとつの絵画を数十分ぐらい時間をかけて眺めたい。できれば、もっと厳かな状態のシスティーナ・ホールで何も考えずにじっくりと天井を見上げたい。

ネットで調べてみたところ、近隣にリゾートホテルがあるらしい。まあ、いいですわね。30万円あるなら、リゾートホテルに滞在したいですわね。昼はアートを堪能して、夜はホテルから海を眺めつつワインでも楽しもうかしら、おほほほ。

 

 

などと、今週のはてなブログのお題を見ていて妄想してしまった。どこかに30万円落ちてないかねえ…。

 

 

 

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