映画っていいねえ。本っていいねえ。

映画や本の感想など。ネタバレ全開なので、ご注意ください。

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』リバイバル上映を全力でオススメしたいための記事

※当ブログは広告を掲載しています。

 

 

※注意!『アバウト・タイム 愛おしい時間について』のネタバレがあります。

 

 

5月31日(金)から私の大好きな映画『アバウト・タイム 愛おしい時間について』がリバイバル上映になる。上映館については、以下を参照してほしい。

【公開10周年記念!ジューンブライド上映】『アバウト・タイム 愛おしい時間について』5月31日(金)よりリバイバル上映決定! | 株式会社つみきのプレスリリース

 

この作品については過去に記事を書いてもいる。私がこの作品を好きな理由は、以下の記事に詰め込んでいるつもりだ。

nhhntrdr.hatenablog.com

 

そういうわけで、この度『アバウト・タイム』を映画館で見られる機会が訪れたわけで、私は全力でこの作品をオススメするため、今回の記事を書いているわけである。私自身、この作品は旧作として観賞したので、まだ映画館での観賞はできていない。なので、私自身、今月末に向けて気合いが入っていたりする。

 

 

オススメにするにあたり、本編を見直してみたが、好きな部分に関しては先の感想記事で書いた部分と変わらない。やはり、クライマックスでの主人公・ティムと父親が海岸で戯れているシーンに尽きる。このシーンが好きな理由も上記の記事に書いてはいる。いるのだが、改めて観ると、この作品のすべてはこのシーンのため積み重ねられているように感じられてくる。

以前、『戦場のメリークリスマス』のトークショー付き上映会に行ったのだが、そこで登壇者のひとりである樋口尚文さんが、「この作品はクライマックスのキスシーンのためにある。大島渚監督はこのキスシーンのために、すべてのシーンを積み重ねてきた」といった旨のことを仰っていて、いまだに記憶に残っている。「一番見せたい(魅せたい)シーンのため、その下準備としてすべてのシーンを積み上げていく」という手法は、この『アバウト・タイム』にも当てはまるように思えるのである。

 

※大島監督の思惑にはまり、『戦場のメリークリスマス』のキスシーンに魅せられた結果、書いた記事はこちら。

nhhntrdr.hatenablog.com

 

当初、ティムは自分の望む結果のため、タイムトラベル能力を使用する。誰だって、こういう能力を持っていたら、失敗を取り消そうと過去に戻ろうと思ったりするだろう。ティムは特段、変わったことは考えてはいない。ただ、自分の思い通りに行かなかったからと、何度もやり直しているのでは、何かが足りないのである。

私の好きなゲームに『ライフイズストレンジ』という作品がある。この作品の主人公マックスは時間を巻き戻せる能力を作中で得るのだが、プレイヤーはマックスを操作して、何度も何度も時間を巻き戻して、自分の納得行く展開を求める。だが、結局は100%満足のいく結果など来ないのだ。誰かを助けようとすれば、また別の誰かを不幸にする。プレイヤーはその事実に気づき、一種の諦観を持つことになる。NHKの番組『ゲームゲノム』のライフイズストレンジ回で、制作者が「気に入らないからと何度も時間を巻き戻しているうちは、まだマックスは子どもなのです」といった旨の話をしていた。この話は、『アバウト・タイム』のティムにも当てはまるような気がしてならない。

nhhntrdr.hatenablog.com

 

 

作中を通して、ティムのタイムトラベルの目的は変化していく。最初は「自分の望む未来に変えるため」。しかし、それに制限がかけられることになり、ティムは「時間を書き換えることなく、過去を過ごすこと」を目的に能力を使用するようになる。ここでティムは、何気なく過ごしていた日々で見逃していた輝きに気づくようになるのだ。そのもっともたるものが、クライマックスで戯れる父子のシーンなのだと思う。「どんなに辛い日でも、辛い時間でも、そのときには気づけなかった喜びや美しさがある」ということが、このシーンで体現されている。そして、このシーンがそのメッセージを体現するためには、そこに至るまでの数多くのシーンが、シークエンスが、積み重なっている。このメッセージは、今まで何度もタイムトラベルをして、七転八倒してきたティムの物語だからこそ、観ている者の心を打つ。

タイムトラベルをして自分の思い通りの時間を作ろうとしてきた人間が、「巻き戻せないからこそ、愛おしい時間」の価値に気づく。だから『アバウト・タイム』は愛おしい。

私たちはティムのようにタイムトラベルはできないが、この作品を観た後で実践できることがひとつある。

この日を楽しむために自分は未来から来て――

最後だと思って今日を生きている

この一言に尽きる。『アバウト・タイム』を二時間通して観賞し、あのクライマックスを観た人なら、非常にスッと胸の中に入ってくるのではなかろうか。

 

というわけで、私は『アバウト・タイム』が好きだ。こんな好きな作品が、せっかく全国上映するのだから、一人でも多くの人に観てもらえると良いな、とファンのひとりとして思う。

 

5月31日(金)から2週間限定です。どうか、少しでも興味を持たれた方は、劇場まで観に行ってください。観に行きましょう!

 

 

 

 

 

 

 

※この記事は、全文無料公開です。ここから先には文章はありません。「投げ銭をしてもいいよ」という方は、「記事を購入」のボタンから投げ銭お願いします。今後の記事作成の励みになります。

この続きはcodocで購入