映画っていいねえ。本っていいねえ。

映画や本の感想など。ネタバレ全開なので、ご注意ください。

ランダム映画体験

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※注意!『FALL/フォール』のネタバレがあります。

 

 

私は食わず嫌いをしがちなタイプの人間なのだが、食に限らず映画や読書においてもこの気質が発揮されてしまう。今、パッとこのブログの映画カテゴリの記事を確認してみたのだが、そこそこジャンルの偏ったラインナップになっているような気がする。何というか、アクション物とかスリラー物とかが少ないよな、と。個人的に心臓に悪いものとかハラハラする体験とかが苦手なため、「映画観るぞ!」となったときにどうしてもこのあたりのジャンルを外しがちなのだ。

 

さて、少し前にテレビをつけて何とはなしにチャンネルをザッピングしていると、WOWOWで放送されていたとある映画に出会った。『FALL/フォール』である。

klockworx-v.com

 

どんな映画化というと、こんな感じだ。

山でのフリークライミング中に夫を落下事故で亡くしたベッキーは、1年が経った現在も悲しみから立ち直れずにいた。親友ハンターはそんな彼女を元気づけようと新たなクライミング計画を立て、現在は使用されていない超高層テレビ塔に登ることに。2人は老朽化して不安定になった梯子を登り、地上600メートルの頂上へ到達することに成功。しかし梯子が突然崩れ落ち、2人は鉄塔の先端に取り残されてしまう。

 

引用元:FALL フォール : 作品情報 - 映画.com

あらすじを読んだだけで、胆が冷えてくるような作品である。ついでに言うと、私は高所恐怖症だ。観覧車に乗っても外の景色を楽しめず、ひたすら念仏を唱えることしかできないし、明石海峡大橋の舞子海上プロムナード(足元がガラス張りで、約47メートル下の海面が見えるエリア)に行った時は、ひたすら腰が抜けていた記憶しかない。そんなわけだから『FALL/フォール』が映画館で上映されていたときに作品情報は得ていたと思うのだが、勿論観に行こうと思うことはなく、スルーもスルー。視界に入らないようにしていたのだが、何の因果かこういう形で出会ってしまった。

 

チャンネルを回したとき、すでに主人公のベッキーたちはテレビ塔の頂上まで登り詰めていた。まだ梯子が崩れる前、意気揚々と踊り場のへりにぶら下がったりしているという状態で、もう見てらんないわけである。あんた、うっかり汗とかで手が滑っちゃったらどーすんのさ。あーやだやだ。あまりにも心臓に悪いから、慌てて私はテレビを消した。

でも気になってしまうのである。5分も経つと、またテレビをつけてベッキーたちの動向を窺う。また見てらんなくなって、テレビを消す。数分後にはまた気になってテレビをつける。これを二、三度繰り返した後、私はもうテレビを消すことはなくなっていた。すっかりベッキーたちが生還できるかどうかが気になって、恐怖よりも彼女たちの行く末を見届けたい欲求のほうが勝ってしまったのだ。場合によっては手で顔を覆い、指の隙間から覗き見るようなスタイルで観賞を続ける。あーやだ、見てらんない。怖い。でも見ちゃう。そんなことを考えていたはずなのだが、物語がいわゆる第三幕に差し掛かる頃には手で顔を覆うこともなく、テレビにかぶりつくような姿勢に変わっていた。

 

とにかくストーリーが熱いのだ。過去の記事で書いたこともあるのだが、私は主人公が作中で追い詰められ、その結果成長するような作品が大好きだ。

nhhntrdr.hatenablog.com

『FALL/フォール』はまさにこのタイプの映画だったのである。「主人公が追い詰められる」という点に関しては言うまでもない。地上600メートルの地点に取り残されているベッキーは、少しでもヘタを打つと死んでしまうような状況下にある。わかりやすく追い詰められているわけだ。

 

物語冒頭でベッキーは夫を亡くし、彼女は「夫なしでどうやって生きていけばいいの?」という状態になる。そんな生への渇望を無くした彼女が地上600メートルのテレビ塔の上に取り残されることで「死ぬのは嫌」という状態へ移行する。十中八九死ぬという状況下でこれでもかという試練を潜り抜けていった彼女は第三幕へ突入すると「何が何でも生きて帰ってやる」という意志を手に入れる。

夫を亡くして生きる意味を見いだせなくなっていたベッキーが夫への依存心を断ち切り、生への意志を手に入れる。彼女のこの変革がわかりやすく描かれているシーンがあるのだが、ここがとにかく熱い。彼女がここで取るある行為は、そのまま生に結びつくことであり、このシーン一つで無気力だったあの頃のベッキーから変革を遂げたのだということが明確に伝わってくるのだ。熱い、もう熱い。

 

といった流れで私はすっかり感動してしまい、作品を見終えたときには「素晴らしい映画に出会った!」という喜びに満たされていた。食わず嫌いをしていたジャンルに、こんな傑作が隠れていたとは!

 

そういうわけで、もっとランダムに観る作品を選んでみるのも必要だと実感した次第。ただ、そのランダムで作品を選出する手段はどうするかということで、当面はライムスター宇多丸さんの『アフター6ジャンクション2』内の映画コーナー「ムービーウォッチメン」を参考にしてみようと決めた。このコーナーにて課題作品とされたうち、最寄りの映画館で上映されている作品にはできるだけ足を運ぼうというわけだ。

www.tbsradio.jp

 

早速、今週初めには『ロスト・フライト』を観てきた。航空パニックものと脱出サバイバルものを掛け合わせた作品なのだが、どちらも私が今まで避けてきたタイプのジャンルである。あたい、飛行機苦手なんよ。地に足がついていないと落ち着かないんよ。

lostflight.jp

 

さて、こういう機会がなければ観なかったであろう『ロスト・フライト』だが、これがかなり楽しめた。前半の航空パニックパートの時点で、もう満足。十分に手に汗を握らされたというのに、ここからさらに主人公たちが危険地帯に不時着してしまったということで脱出サバイバルへと突入するというよくばりセットぶりだ。「ああ、こんな感じで手堅く面白い作品も良いなぁ」なんて思いながら、映画館を後にした。あー楽しかった。

 

というわけで、ランダム映画体験を始めたばかりで、これをいつまで続けるかもわからないのだが、今のところは楽しい。すんごく楽しい。食わず嫌いしていたジャンルにも私にとっての特別な作品が転がっているのだと思うと、お宝探しをしているような気分になってくるのだった。

 

 

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