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『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』におけるほっこり系の友情について

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今月は『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』(以下『絶対BL』)の単行本4巻とドラマCD4巻の発売が重なり、ファンとしては非常に有り難い月だった。くらげバンチでの連載は最近だと2週間に一度かそれ以上に期間を置いていたりするので、久しぶりの燃料投下は非常に嬉しい。しかも連続で来てくれたわけで、有り難いの一言に尽きる。

もちろん、単行本の内容はすでに連載で読んでいるものなので、そこまで新鮮味があるわけではない。しかし、私の応援する旗野くんが単行本に登場したというポイントは非常にデカい。これからは紙の書籍や電子書籍リーダーで旗野くんを拝めるわけだし、何より満を持して登場!って感じが良い。しかも帯にも「最強のフラグ現る――。」とのキャッチコピーと共に旗野くんの顔が出ているし。

おまけ(私は両方アニメイトで購入した)に付いていた小冊子等でも旗野くんのエピソードが取り上げられていて、旗野×主人公好きの身に非常に染みた。何かこう、日照りが続いていた状況で一気に恵みの雨を全身に浴びている感じ。沁みます、潤います。

 

※『絶対BL』とは何ぞや、旗野くんとは何ぞやについては以下の記事で書いています。

nhhntrdr.hatenablog.com

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せっかく4巻が来たので、改めて単行本の1巻から読み直してみたところ、主人公と東條くんの関係にほっこりしてしまった。

知らない方のために一応説明しておくと、東條くんとは主人公の弟・綾人の高校でのクラスメイトであり、彼氏でもあるイケメンだ。イケメンである上に頭も良く、生徒会長で皆の人望も厚く、人当たりも良い。BL界隈で言うところの「スパダリ」ってやつだ。

一方、綾人は主人公に似て地味な見た目に平凡な学力と運動神経。相手なら選び放題であろう東條くんが平々凡々な綾人に惚れているというのが、このカップルの(BL的な)ポイントである。

 

自分がBL漫画の登場人物だと気付いた主人公が、それでも自分はイケメンではないからという理由で己の貞操の安全を信じていたわけだが、それも綾人が東條に告白されたことで平和な日常がひっくり返される。これをきっかけに主人公は「平凡受け」というジャンルを知り、自分もBLのターゲットになる可能性に気付いたことで、『絶対BL』の話は動き出す。

つまり東條くんとは平穏に暮らしていた主人公に危険をもたらした人物である。物語論的に言えば、主人公の日常に変化の時が訪れたと報せにやって来る「使者」ってやつだ。

 

そういうわけで当初、主人公は東條くんに対して警戒心を抱いてかかる。何しろ、東條くんは弟・綾人をBL世界に引きずり込んだ張本人であり、BL世界が自分の身近に迫っていることを思い知らせてきた人物なのだ。

しかし、2巻になる頃には主人公の警戒心もすっかり薄れてくる。「既に弟とカップルが成立しているという安心感があるので」と主人公自身が言っている通り、この二人には恋愛関係に発展しそうな可能性は一ミリもない。「BL漫画の登場人物でありながら、BLになるまいと抗う主人公」と「綾人にベタ惚れの東條くん」という組み合わせだからこそ醸し出されるこの安心感たるや。

 

ところで私は100分de名著のテキスト版『高慢と偏見』の表紙に書かれている「恋愛は、対決だ」というキャッチコピーが大好きだ。

「ままならない他者」とのぶつかり合いは別に恋愛だけに限った話ではなく、友人同士や家族間でも生じるものだが、それでも恋愛における(特に片思いの関係の)コンフリクトの特別感は一歩抜きん出ているように思う。自分を好きになるかどうかもわからない相手に対し、何とか自分を好きになってもらおうとする。だが、相手にも相手の思惑があるから、そうも簡単に事が運ばない。このままならなさが描かれている恋愛ものが個人的には好きだったりする。

主人公と旗野くんの関係はまさに「恋愛は、対決だ」を地で行くようなものだ。主人公は「BL漫画の世界に負けず、親に孫を抱かせてやりたい(あと巨乳彼女が欲しい)」と考えているため、旗野くんには何とか自分のことを諦めさせたい。一方、旗野くんは3年後に改めて告白をするときまでに、主人公に自分のことを好きになってもらいたい。双方の思惑が見事にぶつかり合っている。物語論的に言えば、主人公にとっての旗野くん、旗野くんにとっての主人公は、自分の目的を阻もうとする「敵対者」。素晴らしい、まさに対決だ。

 

とはいえ、(いくらギャグ漫画とはいえ)対決ばかりでは疲れてしまうので、「色恋が発生しないからこその安心感」が漂う主人公と東條くんのシーンが出てくるたびに私は癒される。恋愛にならないからこそ、対決にも発展しない。だからこその癒やし。まるで、スイーツビュッフェの中に置いてあるコンソメスープのような癒やしだ(わかりにくい例え)。

 

そういうわけで、今後も主人公と旗野くんのシーンだけでなく、主人公と東條くんのシーンの癒やしも楽しみである。実際、「いつどこでBLフラグに被弾するか」と気が抜けない主人公にしても、東條くんと一緒にいるときの安心感は半端ないのではなかろうか。

――その東條くんが、旗野くんの恋をサポートしていることなどつゆ知らずにな!(ゲス顔)

 

 

 

 

 

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