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戦メリ原作者L・ヴァン・デル・ポストの『新月の夜(The Night Of The New Moon)』を読む【3】

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※注意!The Night Of The New Moon『新月の夜』『影の獄にて』『戦場のメリークリスマス』のネタバレがあります。

 

 

※前回の記事はこちら

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The Night Of The New Moon『新月の夜』感想③

恐らく主要人物の一人だと思われるNicholsという人物が紹介される。英国空軍の中佐(wing-commander)で、収容所の中でも落ち着いた態度を貫き通していた。

「私」とNicholsが獄中で出会ったのはジャワ島が日本によって陥落(1942年3月9日)してから数ヶ月後。この辺りの時期、ドイツや日本は快進撃を続けていて、戦局はどうなるかわからない状態だった。鬱屈した空気の中、収容所内の捕虜たちの間で根拠のない「日本は既に敗北している」との噂が蔓延する。

心地よい幻想に逃げず、常に現実を見据える必要があると信じていた「私」とNicholsは、部下たちに現在の収監がいつまで続きそうかを部下に伝えようとする。

 

『新月の夜』から見えてくる『戦場のメリークリスマス』の側面③

今回の箇所は、『戦場のメリークリスマス』にてロレンスが獄中でセリアズに語っていた過去の出来事及び、『影の獄にて』収録の「剣と人形」を思い出させる。こちらもシンガポール陥落前後が舞台で、ロレンスは東南アジアに赴任している(「剣と人形」での描写では、ロレンスはABDA司令部総司令ウェイヴェルの指揮下にいたということで、ジャワ島のバンドンにいたことになるか。 参照:ABDA司令部 - Wikipedia

)恐らく『新月の夜』の「私」も『戦メリ』のロレンスも、ジャワ島陥落により、日本軍の捕虜となったのだろう。

 

『新月の夜』ではジャワ島陥落の数ヶ月後とあるが、ちょうどミッドウェー海戦(1942年6月5~7日)のあたりだろうか。それとももっと後の時期だが、情報統制によって捕虜たちには日本の劣勢が伏せられていたのだろうか。

一方、時期が1942年のクリスマス前後の『戦メリ』では、フジムラ中佐の「戦局も低迷を続けている折から」やヒックスリの「戦局が不利な事は奴らも知っている」といったセリフから、少なくとも将校レベルの人間には日本の劣勢のニュースは入っていたようだ。

 

いずれにせよ、ジャワ島陥落から間もない頃の「私」たちは、下手をすると生きて収容所を出られない可能性を感じていたようだ。

 

(【4】に続く)

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